親の影響で生きづらさを感じているアダルトチルドレン。
調べてみても、病気ではないから治せないといった意見があったり、自分を理解すれば自然と治るという意見もあったりとさまざまで、そもそも自分で治せるものなのかもよくわからずお困りではないでしょうか。
そこで今回は、アダルトチルドレンはそもそも治せるものなのかどうかということと、自分でできる具体的な治し方について解説します。
アダルトチルドレンで生きづらさを感じている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
アダルトチルドレンは「治す」もの?
そもそもアダルトチルドレンは治すものなのでしょうか?そして、治るものなのでしょうか?
アダルトチルドレンを生む機能不全家族
アダルトチルドレンとは、幼少期から家庭でトラウマを抱えて育ち、その影響で大人になってからも人間関係で生きづらさを感じている人のことを指します。
もともとは「アルコール依存症の親を持つ子ども」という意味で、Adult Children of Alcoholicsという語が用いられていましたが、近年ではこれに限りません。
トラウマの温床となる環境をもった家庭(機能不全家族)で育ち、生きづらさを感じている人全般をアダルトチルドレンと呼びます。
アダルトチルドレンの具体的な定義や特徴といった詳細については、こちらのコラムもご覧ください。
アダルトチルドレンは人口の8割以上とも
現在アダルトチルドレンの傾向に該当する人は、人口の8割以上というデータもあるようです。
この数字に科学的根拠は見つけられませんでしたが、アダルトチルドレンという定義自体がもともと医学用語ではないので、時代によって移り変わっている部分もあるかもしれません。
しかし8割という数字は決して大げさではないなと、個人の経験としても思います。アダルトチルドレンで生きづらさを感じている人たちと話していると、家庭環境というよりも親そのものに原因があることに気が付きます。
それはつまり、アダルトチルドレンを育てた親もまた、アダルトチルドレンであった可能性が高いということです。アダルトチルドレンが世代間で連鎖するものだと考えれば、決して8割という数字は多すぎるものではないでしょう。
アダルトチルドレンとそうでない人がいるのではなく、誰しもアダルトチルドレン的傾向を持っているけれど「自覚している人」と「自覚していない人」がいる、と考えたほうがこのあと解説する治し方も頭に入りやすいかもしれません。
「治す」=「理解する」ということ
アダルトチルドレンを「治す」、というと薬物治療などによって病気を治すという印象がありますが、アダルトチルドレンそのものは病気ではありません。そのため、一般的な治療を施すことはできません。
「アダルトチルドレンは病気ではないので治すものではない」と言う人もいますが、しかし実際にアダルトチルドレンを治せたという経験談も多くあります。
では実際に治せたという人たちが何を持って治せたと言うのかというと、「自分のことについて理解した」という意味合いで治ったと言われる方が多いです。
アダルトチルドレンは治療する類のものではありませんが、理解して認識して、克服したり矯正していくことはできると言えるでしょう。
アダルトチルドレンの治し方
ここからは、具体的にアダルトチルドレンを治す(=理解する)ために何からするべきか考えていきましょう。
段階としては、大きく3つのステップに分けられます。文字にすることでより客観的な理解が進みますので、それぞれメモなどを手に取り組んでみてください。
なお、ここから先の作業は、人によっては非常に大きな精神的苦痛を伴う場合があります。なるべく1人で取り組まず、1人で取り組む場合も気分が悪くなったらすぐに中断し、専門家の助言を求めましょう。
親の価値観・ルールを切り離して卒業する【過去】
まずは、親に植え付けられてきたあらゆる価値観やルールを切り離す作業です。
過去の出来事のうち、「印象強い出来事」をふりかえる
過去の親子関係や家庭環境がどうであったか、ふりかえってみましょう。
「何歳ごろ、誰と、こんなことがあった」と事実だけに注目して箇条書きにしてみてください。すべての項目を埋める必要はありません。
目安としては、5~10個も出ればひとまず十分です。
- 5歳ごろ、家族で海水浴に行った(気がする)
- 小学生のころ、母がいつも怒っていた
- 両親が喧嘩しているのをみたことがない
過去の出来事をふりかえるときのコツは、無理に「今の自分」と結び付けすぎないことです。一見関係のなさそうな出来事が、実は巡り巡って今の自分を形作っていたりもします。
直接的に辛さを感じている出来事ばかりでなく、当時の家庭の様子、家具の配置、よく行った場所やよく食べた物など、そういったものからふりかえるのもおすすめです。
親との関係だけでなく、兄弟との関係やクラスメイトとの関係、学校の先生との関係などについても意識することで、よりふりかえりやすくなります。
最近あった出来事のうち、「辛さを感じている出来事」をふりかえる
過去の出来事をふりかえったら、今度は最近の出来事をふりかえってみてください。
先ほどと同じく箇条書きにしていきましょう。今度はよりシンプルで大丈夫です。
- 洋服を買ったけど失敗したなあ
- ランチのお店選び失敗したなあ
- ジムに通うつもりで会費払ったのに全然通えてないなあ
- せっかく頑張って入った会社をすぐに辞めちゃったなあ
最近あった出来事をふりかえるときには、過去とは違い「辛さを感じている出来事」にフォーカスを当ててみてください。ただしこのときも、「それが過去に繋がっているかどうか」は一旦考えずにふりかえること。
例を参考に、 日常的な出来事を思いつくまま書いていけばOKです。
過去と最近の出来事を見比べて、どのくらい影響を受けているか確かめる
過去の出来事と最近の出来事をそれぞれ箇条書きにしたら、今度はその2つを見比べてみてください。書いたばかりで記憶が新しければ、見比べるまでもないかもしれませんが、一応じっと見てみてください。それによって気づくこともあります。
そうして見比べた時、明らかに繋がっている出来事もあれば、特に関係のない出来事もあるでしょう。
「過去と今をふりかえりそれらを見比べる」ことによって、親の与えた価値観やルールと、自分で築き上げた価値観やルールとを見比べることができます。
1回でピンと来なかったという人は、ぜひ何度でも繰り返してください。ふりかえるうちにだんだんとコツがつかめてきて、1回目よりも2回目、2回目よりも3回目のほうが的を射た内容が思い出せるようになっていくはずです。
親の価値観と自分の価値観を見極めたら、いらないものから卒業していく
親の価値観と自分の価値観を切り分けて見比べられるようになったら、その中で「もういらない」と思うものから卒業していきましょう。
このとき、無理に「捨てる」とか「諦める」という風に否定的に考える必要はありません。
親の価値観の否定は、あなた自身の過去の時間を否定することでもあります。それらはすでにあなたのひとつになっているので、すべて捨てようとしてもそう簡単に捨てられるものではありません。
「捨てる」よりも、「卒業して新たなステージへ進む」というイメージのほうが、自己理解を阻まずに済むでしょう。
自分の価値観・ルールを育てる【現在】
親の価値観の中で今の自分に必要ないと思うものを無事卒業することができたら、続いて自分の価値観やルールを育てるステップです。
まずは自分の価値観を知る
まずは、自分自身の持っている価値観を知るところから始めていきましょう。
自分の価値観を知るための質問やテストは数多くありますが、今回は私も実際に使ってみて非常に効果を実感できたものをご紹介します。
スタンフォード大学の応用心理学者エドワード・ケロッグ・ストロング・ジュニア(Edward Kellog Strong Jr)さんが開発したテストです。
下記の質問に、それぞれ5~10個程度回答することで、自分がどのようなことに興味・関心を示すのか、情熱を向けることができるのかといったことを知ることができます。
価値観を意識しながら生活するために目に入るところに書いておく
自分の中で大事にしている価値観がなんとなくでもいいので見えてきたら、それを普段から意識して生活するようにしてみましょう。
ただ意識するだけでは難しいと思うので、できればスマートフォンの壁紙などに、大事にしたい価値観リストを書いておくことをおすすめします。
価値観を大事にできたかどうかを判断する仕組みづくり
さらに、価値観を大事にできているかどうかを判断する習慣づけまでできると理想的です。
具体的には、「その日1日のうち、価値観に基づいてどのような行動を取ったか」を記録していくとよいでしょう。
私も実際にワークに取り組んでみたところ、「家族」や「余裕」を優先したいという価値観を持っていることに気が付いたので、残業せずに帰れた日には自分で自分を褒めるようにしていました。
自己を省みて、承認したり修正したりしていく【未来】
今の自分に対する整理がある程度ついたら、今度は未来へ向けてそれらをさらに継続し続けられるような仕組みを考えていきましょう。
日記・SNS・ブログなどなんでもいいので「記録する習慣」をつける
自己を省みる、つまりふりかえるために真っ先に必要なのが、記録です。
ここまでワークを試した方なら分かると思いますが、過去に遡ってふりかえっていくのは非常にエネルギーを消耗しますし、それだけの力を注いだとしても十分にふりかえれるかというとそうでもありません。
そのため、手書きの日記でも、SNSでも、ブログでも、あるいは社内の日報でもなんでもいいので、普段からその日あった出来事をふりかえれるような記録を取ることを心がけましょう。
わざわざふりかえるための記録を取るのが難しいという場合は、普段の仕事の作業記録やメモを徹底的に保存しておくことをおすすめします。
定期的にふりかえる機会を設ける
記録が残せるようになったら、それらをもとに定期的にふりかえる機会を設けるようにしましょう。
ここでも、あまりきちんとやろうとするとおっくうになってしまうので、期間も厳密に定めず、ふりかえりの内容も「ただ記録を遡って見てみるだけ」で全く構いません。
ただ自分の過去をふりかえるだけでも、精神安定に役立つはずです。
1年に一度は「価値観をふりかえる」機会を設ける
ふりかえるのは日々の行動や考えだけではありません。価値観も定期的にふりかえる必要があります。
一度築かれた価値観も、年月や、関わる人間関係とともに変わっていきます。分かりやすいところでは、たとえば結婚や出産によって家族の優先順位が高くなったり、大病を患って健康に対する意識が変わったりといったもの。
こうした自身の価値観の変化をないがしろにしたままではよくないので、できれば年に1回、年末や年初の恒例行事として「価値観のおさらい」をするようにするとよいでしょう。
専門家の力を借りるのもひとつの手
今回は自分でできるアダルトチルドレンの治し方を解説しましたが、取り組んでみたけれどなかなか変化が感じられないという場合には、カウンセラーなどの専門家の力を借りてみてください。
現在はオンラインカウンセリングも気軽に受けられますし、相性のよいカウンセラーとのマッチングに力を入れているサービスもあります。もちろん、当ルームを頼っていただけた際は全力でサポートさせていただきます。
まとめ
今回は、アダルトチルドレンの具体的な治し方について解説しました。
特に過去の出来事をふりかえるステップでは、生きづらさを感じている傾向が強ければ強いほど、精神的な苦しみや痛みが伴うと思います。そのため、無理にひとりでやり切ろうとせず、ぜひ人に頼るという選択肢も選べるようにしておいてください。
わたし自身ももちろんお話を聴くことはできますし、自治体などが主催する無料相談もあります。あなたが生きづらさを解消して、生きやすくなることを願っています。