論理療法(REBT)とは|考え方・一連の流れ・7つの思い込みの具体例を解説

このページでは、当カウンセリングルームで提供する論理療法(REBT)について、基本的な考え方から、実践の一連の流れ、思い込みの具体例などを紹介します。

論理療法についての概要を知りたいという方や、当ルームのご利用を検討されている方の参考になりましたら幸いです。

論理療法とは

論理療法は、心理カウンセリングで用いる手法の一種です。

哲学的な思考でもって、そもそもの考え方にフォーカスし、思考・考え方が変われば感情や動作も変わるという考え方のもと、考え方の矯正を目指します。

認知療法や認知行動療法にも影響を与えた認知モデルを用いた手法で、傾聴などを重視した来談者中心療法モデルに比べて、カウンセラーから相談者へ働きかける要素が強いのが特徴です。

そのためカウンセラーの技量や経験がものを言う部分の大きい療法でもあり、どんな悩みでも解決できるという万能な手法ではありません。

万能ではないからこそ、適した悩みに対しては非常に高い効果が期待できます。

論理療法の基本は「考え方が変われば感情・行動も変化する」

論理療法では、出来事に対して感情を抱いたり行動を起こす前に、先に思考があると捉えます。

出来事 ⇒ 『思考』 ⇒ 感情・行動

感情や行動を変えるのは難しくても、思考を変えることはできます。

そして思考を変えることができれば、おのずと感情と行動も変わるはず、というのが論理療法の基本的な考え方です。

例えば下記のケースでは、「責められた」という思考によって、感情と行動が影響を受けています。

感情と行動が施行に影響を受ける例
  • 出来事:「どうしてできなかったの?」と言われた。
  • 思考:できて当たり前のことをできなかったから責められたと考えた。
  • 感情:責められたことに対し怒り・悲しみ・羞恥心などの感情が湧いた。
  • 行動:「できなかったものは仕方ないでしょ!」と感情的に言い返した。

実際には、「どうしてできなかったの?」という言葉に責めるニュアンスはなかったかもしれません。

それを責められたように感じてしまうのは、「人間はこれくらいできて当たり前」といった思い込みがあるためです。

このとき「人間はできてもできなくてもいい」と考えることができれば、怒りや悲しみを感じることもなく、感情的に言い返すことも回避できます。

これが論理療法の考え方であり、また心理カウンセラーが実際に論理療法の中で相談者へ気づきを与えていくアプローチそのものでもあります。

論理療法の基本的な流れ

論理療法を導入する際の基本的な流れは、次の通りです。

  1. 感情問題に着目する
  2. 論理療法について説明し、「考え方」に注目することを伝える
  3. どんな問題を解決するのか。「目標」を決める
  4. 目標達成のために「一緒に」問題を解決していく

感情問題に着目する

まずは、相談者の悩みが論理療法で解決するのに適しているかどうかを判断します。

論理療法に向いている悩みとは例えば、お金がなくて「不安」、人目が「怖い」、上司に怒られて「自信喪失した」、といった、感情に根差す問題です。

反対に、そもそも問題の根源がはっきりしていない場合や、単に話す時間が足りていない場合などには向きません。

また、論理療法では考えながら解決していくため、そもそも話を長時間聞くことが難しかったり、考えることそのものが苦手な場合、あまり向かなかったりもします。

論理療法について説明し、「考え方」に注目することを伝える

相談者の悩みが論理療法で解決するのに適していると判断した段階で、相談者に論理療法を導入することを伝えます。

論理療法では、さきほどの例で言うところの「人間はこれくらいできて当たり前」などの思い込みが、精神的な苦痛を生じさせていると考えます。

でも、思い込みなので本人は気づくことができません。

そこで論理療法を行う際は、カウンセラーの働きかけによってこの思い込みにいかに気づいてもらうかが重要になります。

でも、いきなり「それは思い込みだよ」と言われてもピンと来ませんよね。

そこで初めに、相談者にこの流れを解説します。

出来事 ⇒ 『思考』 ⇒ 感情・行動

そして、今抱えている不安や罪悪感、怒りといった感情を直接どうにかしようとするのではなく、なぜその感情が沸き起こったのかという考え方に目を向けることを説明します。

ここがうまく伝えられないと、その後の問題解決に支障を来してしまうため、カウンセラーは急ぎ過ぎずこのパートを丁寧に行う必要があります。

特に論理療法は哲学的思考が強いため、人によっては問題解決に繋がらない関係のない話をされていると感じる可能性もあります。

どんな問題を解決したいのか。「目標」を決める

続いて「何を解決するか」という目標を決めていきます。

論理療法は「問題解決」を目標としていることが大きな特徴で、「何の問題についての話か」をはっきりさせておくことがとても重要です。

ここで設定する目標があいまいだと、カウンセリングを続けても効果を感じづらくなってしまうため、現実的で明確な目標を立てます。

またさらに、相談者自身が「解決できて嬉しい」と思える目標を立てることが必要です。

目標達成のために「一緒に」問題を解決していく

論理療法は明確に問題解決を目標としている分、 カウンセラーから具体的な提案をすることも多いため、 カウンセラーと相談者の信頼関係が非常に重要です。

カウンセラーは相談者に対して、次の3点を意識しながら信頼関係を構築していきます。

  • 共感的なかかわりを意識して話を聞く
  • 感情そのものでなく奥にある思考を意識して話を聞く
  • 感情そのものを否定したり、問題そのものを指摘したりしない

信頼関係が十分でない状態で問題解決を急ぐと、相談者もなかなか提案を受け入れることができず、感情的に反発してしまいます。

なお共感的なかかわりを示す積極的傾聴の具体的な方法については、こちらのコラムも参考にしてください。

思い込みの具体例

最後に、論理療法で取り扱う思い込み(イラショナルビリーフ)にはどのようなものがあるか、具体例をもとに解説します。

実際にはどれかひとつに該当するわけではなく、ほとんどのケースにおいてこれら複数の思い込みが関連していると考えられます。

  1. マイナス思考
  2. 拡大解釈・過小評価
  3. 感情的決めつけ
  4. すべき思考
  5. 一般化し過ぎ
  6. 結論の飛躍
  7. 極端なレッテル貼り

マイナス思考: よいことを無視してなんでも悪い出来事にすり替えてしまう

マイナス思考の思い込みが染みついていると、どんなに良い出来事が起こっても、すべて悲観的に捉えてしまいがちです。

例えば他者からの評価に対して、「なぜ自分の能力が評価されないのだろう?」と考える一方で、すでに評価されている部分にきちんと目を向けられていなかったりします。

拡大解釈・過小評価:短所や失敗を大げさに考え、長所や成功を過小評価する

拡大解釈・過小評価することの問題は、成功から目をそらし失敗にばかり目を向けてしまう点です。

自分の失敗は大げさに考えるのに、成功にはちゃんと目を向けないことにより、「何をやっても自分はダメ」といった考えに陥ってしまいます。

感情的決めつけ:客観的な事実より主観的な感情によって判断する

客観的な事実を見れば明らかなのに、自分の抱いた感情に従って物事を判断することを「感情的決めつけ」と言います。

例えば、ニュースで無実が報じられているにもかかわらず「あの人は目つきが悪いから犯人に違いない」などと決めつけるのは明らかに感情的決めつけです。

すべき思考:~すべき・~すべきでない、と考える凝り固まった思考

すべき思考はレッテルと連動していることも多いです。

「父親ならば厳しくあるべき」「女性ならはしたない言動はすべきでない」などと、レッテルに応じた言動を無意識に求める傾向があります。

一般化し過ぎ:よくないことがあると「いつもこうだ」とネガティブに捉える

一般化する傾向が強い人は、よくないことがひとつでもあるとあらゆることに適用してしまいがちです。

小石や段差につまづいただけで、「本当についていない」「いつもこうだ」「何もかもうまくいかない」とすべてをネガティブに捉えてしまいます。

結論の飛躍:深読みや先読みをして悲観的・否定的な結論を出してしまう

結論の飛躍をする人は、感覚的に鋭い人ほど多い傾向にあります。

例えば「あの人が誘いを断ったのは私のことを嫌いだからだ」などと結論の飛躍をして、かつ悲観的で否定的な結論を出してしまいます。

極端なレッテル貼り:自分に対し極端にネガティブなレッテルを貼ってしまう

極端なレッテル貼りは、失敗した自分に対する厳しすぎる姿勢が原因だと考えられます。

こんなこともできないなんて、なんて自分は愚かなんだろう。なんてバカなんだろう。なんてダメ人間なんだろう。といった風に、ネガティブなレッテルを貼ってしまいます。

まとめ

今回は論理療法の基本的な考え方と一連の流れ、そして思い込みの具体例について解説しました。特に思い込みの具体例などは、ひとつも当てはまらないという人は少ないでしょう。

論理療法はセルフカウンセリングにも活用できますので、心当たりのある方はぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。ただし、心身に支障をきたすような場合は無理をせず、専門家を頼ってくださいね。