- 周りの人がいつも嫌がらせをしてくる
- 悪意を持って接してくる人が多い
- 味方がいなくて生きづらさを感じている
そんな風に感じるとき、そこには敵意帰属バイアスが影響している可能性があります。
敵意帰属バイアスにとらわれていると、何気ない一言に過剰に反応したり、悪気のない行動を攻撃と受け取ってしまったりします。
敵意帰属バイアスとは、人間がもつ思い込み(認知バイアス)の一種です。その存在を知るだけでも、「ああ、この人も悪意があってやっているわけではないんだな」と納得できるようになるかもしれません。
心当たりのある方はぜひ参考にしてください。
敵意帰属バイアスとは
敵意帰属バイアスとは、認知バイアスの一種で、他者の言動の原因が、敵意や悪意によるものだと認識してしまう心理的傾向のことを言います。
敵意帰属バイアスが強いと、下記のような状態に陥りやすくなります。
- 質問をされただけなのに詰問されたように感じる
- 褒められたはずなのに嫌味や皮肉を言われたように感じる
- 話をしているだけなのに否定されたように感じる
帰属とは、心理学用語で「言動の原因を何のせいにするか?」を指すもので、これを敵意に帰属させることから敵意帰属バイアスと呼びます。
もともとは、Crick&Dodge(1994)の社会的情報処理モデルにおける「符号化」「解釈」のステップで起こった認知の歪みのうち、他者の敵意に帰属させるものを指すものです。
最近では、キングコング西野さんがブログ記事やVoicyなどで取り上げたこともあって、心理学に関係のない分野でも取り沙汰される機会が増えました。
敵意帰属バイアスの原因
敵意帰属バイアスの原因は、認知の歪みです。
認知とは、物事の捉え方や考え方のことで、これが歪んでいる状態とは簡単に言うと「思い込みに縛られている」ということ。
敵意帰属バイアスは、言い換えるならば被害妄想と言ってもよいものであり、歪んだ認知によって、実際にはない敵意を感じ取ってしまっているのです。
大まかに、次に該当する人が敵意帰属バイアスにとらわれやすいと考えられます。
- 自信がない
- 自己肯定感が低い
- 視野が狭い
- 経験が浅い
総合的に考えると、「弱い自分を守るために攻撃的になりやすい」と言えるでしょう。
実際、敵意帰属バイアスに関する研究では、「大人よりも子どもの方が敵意帰属バイアスにとらわれやすい」という結果が示されています。
ただし、「思い込みだから敵意帰属バイアスにとらわれる人が悪い」といったシンプルな話ではありません。
認知が歪む原因にはいろいろなものがあり、例えば幼少期に親から受けた影響がそのひとつです。
子どもは、特に幼いころほど親の言動こそが正常なものだと信じて記憶しますが、親自身の認知が歪んでしまっていると、やはり子どもの認知も歪みやすくなってしまいます。
こうした悲しい連鎖から生まれたのが「毒親」「アダルトチルドレン」といった言葉であり、これらの責任を誰かに求めるのはあまりに酷です。
敵意帰属バイアスを始め、認知バイアスの原因は「人間が生き残る過程で培った能力」と考えられるものもありますし、はたまた「社会が発達した副作用」といった考え方もできます。
だからこそ、「誰かのせい」と考えるのではなく、「これこそが人間の性質だ」と認識して対処法を考えていくことが重要です。
敵意帰属バイアスの特徴
敵意帰属バイアスがやっかいなのは、一見すると「ただ誤解しているように見える」点です。
そのため、周囲の人もなんとか事実を伝えようと説得を繰り返すのですが、敵意帰属バイアスが強い状態の人にどんなに説得をしても通じません。
なぜなら、認知が歪んでいるからです。
質問者の意図を誤解しているわけではなく、認知が歪んでしまっているため、どんなに説明をしても互いの認知が噛み合わない限りは議論が平行線になってしまいます。
なぜか話が堂々巡りしてしまう。論理的に説明したはずなのに全く伝わらない。
そういうときこそ、敵意帰属バイアスの存在を疑いましょう。
敵意帰属バイアスの対処法
敵意帰属バイアスの対処法は、一言でいうならば割り切ることです。
それだけでは分かりづらいと思いますので、今回は次の2つに分けてそれぞれ解説していきます。
- 自分が敵意帰属バイアスにとらわれないための対処法
- 他人の敵意帰属バイアスに直面したときの対処法
自分が敵意帰属バイアスにとらわれないための対処法
まずは、自分が敵意帰属バイアスにとらわれないようにするために、次のことを心がけましょう。
怒りを切り離す
敵意帰属バイアスにとらわれているとき、その人は傍目には「感情的に反論している」ように見えています。裏を返せば、感情的でない反論は敵意帰属バイアスにとらわれているとは映らないということでもあります。
そこで考えられる対処は、感情を切り離すということ。特に敵意帰属バイアスに繋がりやすい感情である、怒りを切り離す意識を持つことです。
誰かの言動に対して一瞬でも「怒り」を感じたときは、何か反論をする前にまずは、「いま自分は怒りを感じた」という事実そのものに集中してください。
それだけでも、怒りの感情を和らげることができます。そうして怒りが収まったところで、改めてその言動に向き合ってみましょう。
これだけでも、敵意帰属バイアスによる思い込みのうち、大部分が切り離せるはずです。
いったん繰り返してみる
怒りは感じていないけれど、やっぱり敵意や悪意を感じてしまう。
そんなときは、相手の言動を反すうしてみましょう。つまりリピートするのです。
実際に「○○ですか?」と聞き返してもいいですし、それが難しければ頭の中で繰り返すだけでも構いません。
その言葉は、相手に向けるためのものであり、自分に向けるためのものでもあります。
「相手の言葉」が「あなたの言葉」になるだけで、少し受け取り方が変わるはずです。
敵意帰属バイアスにとらわれたくなければ、いったん自分の口や頭で繰り返してみることを心がけましょう。
「自分のとらえ方はすべて間違っている」という前提で接してみる
認知が歪んでいると言われても、実際にどの認知がどう歪んでいるのか考えるのは大変です。
自分一人で、自分の認知の歪みをピンポイントで見つけるのは、不可能と言ってよいでしょう。
ただそれでも、すべての認知を疑うことはできるはずです。
あらゆる認知に対して、「本当にそれで合っているのか?」と考えてみてください。
それによって、怒りを切り離すきっかけにもなりますし、繰り返せるだけの余裕も生まれるでしょう。
他人の敵意帰属バイアスに直面したときの対処法
続いて、他人の敵意帰属バイアスに直面したときの対処法です。
説明しようとしない
他人の敵意帰属バイアスに対してもっともシンプルな対応は、説明しようとしないことです。
敵意帰属バイアスは思い込みであって誤解ではありませんから、それを説得するということは、相手の考え方を根本から変えさせるのに等しいと考えた方がよいです。
それまで信じていたものを根本から変える。いわば宗旨替えするようなものですから、少し丁寧に説明するのとはわけが違います。
その覚悟を持って接することができないのであれば、「この人はいま敵意帰属バイアスにとらわれていそうだ」と思った時点で、話をやめるのが無難です。
関わる頻度を減らす
残念ながら、敵意帰属バイアスを簡単に取り払うことは不可能です。
タイミングによって、気分がよければバイアスの影響が弱まったり、体調が悪ければ反対に強くなったり、という変動はあれど、完全になくなることはありません。
そのため、「また折をみて話そう」とタイミングを伺うことも得策ではないでしょう。
それよりも、敵意帰属バイアスの強い人に関わる頻度そのものを減らした方が根本的な解決に繋がります。
その人の言葉に耳を傾けひとつずつほどいていく
相手が身近な人であり、どうしてもその人の敵意帰属バイアスを弱めたいと考えるなら、まずはその人の認知がどのように歪んでいるのかを読み解く必要があります。
ひとつずつ知って、絡まってしまった認知をほどいていくのです。
このときに求められるのは、積極的傾聴の姿勢です。
積極的傾聴は、カウンセラーの基本であり最重要なスキルでもあります。
相手の話を否定するのではなく、あなたの意見を伝えるのでもなく、ただひたすら共感を示して耳を傾け続ける。
これはとても根気のいる作業であり、技術も体力も要求されます。
くれぐれも、あなた自身がつぶれてしまわないよう気を付けてください。
まとめ
敵意帰属バイアスにとらわれる機会は、決して少なくありません。
他者が敵意帰属バイアスにとらわれているなと感じたことのある方は、ぜひ自分自身もとらわれていないだろうかと疑ってみてください。
なお、夫婦や恋人など身近にいる大切な人の敵意帰属バイアスをどうにかしたいという場合には、こちらの「アダルトチルドレンとの接し方」について解説したコラムも参考になると思います。
ぜひあわせてチェックしてみてください。
います、います、こういう人。かくいう私奴めも、ときどき、『なんだ、こいつ』ってなることありますから。厄介なものです。
コメントありがとうございます。自分自身が敵意帰属バイアスにとらわれているときこそ、冷静に顧みたいものですね……。