今回は、アダルトチルドレンの妻と接する中でわたし自身が学んだことを中心に、アダルトチルドレンとの接し方について解説します。
パートナーがアダルトチルドレンかもしれないとお悩みの方はもちろん、職場の上司・部下や、友人・知人がアダルトチルドレンかもしれないと感じている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- アダルトチルドレンとは
- アダルトチルドレンとうまく接するのが難しい理由
- アダルトチルドレンとの接し方|妻と接する上で気を付けている17のこと
- 本人が言わない限りアダルトチルドレンとして扱わない
- 普段から話す習慣をつくる。「その日あった出来事」を聴くのがおすすめ
- 話すときは「納得するまで徹底的に話す」癖をつける
- 「褒める」のではなく「ただ認める」という意識を持つ
- 「同意する」のではなく「受容する」という意識を持つ
- 「同情する」のではなく「共感する」という意識を持つ
- 断るときははっきり断る。変に譲って自分の基準がぶれないように
- 自分自身もまたアダルトチルドレンであるかどうかを見直す
- 「普通は」「常識的に考えて」などの言葉が浮かんだら自分を疑う
- 客観的な視点を提供する意識を持つ
- 決めつけたり答えを与えようとしたりしない
- 他者評価に偏っているときは「あなたはどう思うの?」と引き戻す
- 表情や言葉など、表面だけで理解した気にならない
- 家族を大事にしよう、などと気楽に言わない
- 過去を否定することによって自己肯定感を高めようとしない
- 相手に治療の意思があるなら専門家を頼るのもひとつの手
- 自分自身が最優先であることを忘れない
- まとめ
アダルトチルドレンとは
アダルトチルドレンとは、幼少期から家庭内でトラウマを抱えたまま成人し、その影響で大人になってからも仕事やプライベートにおける人間関係で生きづらさを感じている人のことを指します。
もともとは「アルコール依存症の親を持つ子ども」という意味で、ACOA(Adult Children of Alcoholics)と呼ばれていました。しかし近年はより多くの人に同じ傾向が見られるとして、アルコール依存症に限らずアダルトチルドレンと呼ばれています。
アダルトチルドレンについての詳細は、こちらのコラムもご覧ください。
アダルトチルドレンとうまく接するのが難しい理由
このコラムを読まれている方は、アダルトチルドレンの傾向が見られる人と付き合う難しさを痛感している方が多いのではないでしょうか。
アダルトチルドレンと付き合うのが難しい理由は、ひとえに人間関係の築き方を知らないからです。
アダルトチルドレンは、機能不全家族という特殊な環境で育ってきたため、適切な人間関係を構築するという経験が乏しいと言えます。
学校や職場などで後天的に人間関係について学ぶことができた人はまだよいほうで、アダルトチルドレン的傾向が強い人ほど、社会へ出てからもその性質で生きづらさを感じ続けます。
そして、人を信じられなくなり、自分を信じられなくなり、心をまっすぐに打ち明けるという方法を見失ってしまうのです。そのためアダルトチルドレンと接するうえでは、自分が人間関係を築くお手本を見せるのだという心構えが大切になります。
アダルトチルドレンとの接し方|妻と接する上で気を付けている17のこと
それでは、実際に私が妻と接する中で気を付けてきたことを踏まえて、アダルトチルドレンと接するコツについて解説していきます。
本人が言わない限りアダルトチルドレンとして扱わない
まず初めに、あなたの目から見てどんなにアダルトチルドレンに該当する傾向が見つかったとしても、本人に自覚がない限りは安易にアダルトチルドレンとして扱わないようにしましょう。
また、部分的にアダルトチルドレンの自覚があったとしても「この行為まで含まれるとは思っていない」ケースもしばしばです。
そんなときに「君のこういうところはアダルトチルドレンが原因だと思う」と話しても、話が前に進みません。
話をするときは、「あなたはアダルトチルドレンだから怒りっぽいのだと思う」ではなく、「あなたの怒りっぽいところを私は直した方がいいと思う」という風に、アダルトチルドレンの話は一旦抜きにして話すようにしてみてください。
例えば、「あなたが仕事ができないのは親のせいだ」と急に言われたとして、そんなの受け入れられるでしょうか?本人に自覚がないままアダルトチルドレンを疑うのはこれと同じことです。
普段から話す習慣をつくる。「その日あった出来事」を聴くのがおすすめ
話をしなければ、お互いのことを理解することはできません。しかし、妻が、部下が、アダルトチルドレンで話を分かってくれないとか、すぐ感情的になるとか、そんな風に悩むケースでは、しばしば話す時間が足りていないことが多いです。
話す時間が足りないというのはどういうことかというと、「用事があるときしか話さない」状態になってしまっているのではないでしょうか。
そうなると、いざ話すたびに意思疎通が取れないことを実感することになり、お互いに話すことに対してネガティブな印象を持つようになってしまいます。
そのため、普段から「用事がなくても話す」機会を設けることが大切です。話すことを用意して話すのではなく、話すことそのものを目的にしてみてください。
わたしも、夫婦で話す時間や一緒にいる時間が足りていないなと感じたときは、食事のときなどにできるだけ「妻のその日の出来事」を聞くことにしています。
夫婦で話し合う習慣を作るポイントについては、こちらのコラムで解説しています。
話すときは「納得するまで徹底的に話す」癖をつける
何かについて話すときは、お互いが納得するまで徹底的に話すように心がけましょう。途中で話がそれてしまったとしても、根気強く話を戻して、結論まで導いてください。
アダルトチルドレンの傾向のひとつとして、 真面目な話になると怒られるのではないかとびくびくすることがあります。そのため、真面目なトーンになった途端、おどけて場を和ませようとしてしまう傾向があるのです。
本人は話を聞く気がないわけではありませんし、ふざけているわけでもありません。そうしなければ、理不尽に怒られる環境で生きてきただけなのです。
これを解きほぐすためには、真面目な話をしても悪い結果にはならないし、むしろ真面目な話をすれば問題が解決するのだという成功体験を積むしかありません。
また、あなたの伝えたいことだけを伝えて、相手が納得していないのに話を終わらせるのももちろんNGです。
「褒める」のではなく「ただ認める」という意識を持つ
「自己肯定感が大事だ」という話が広まるあまり、肯定しよう肯定しようと気を付けた結果、それが本心でない表面上の褒め言葉になってしまっていませんか?
アダルトチルドレンと接するときには、褒めるよりも前に、「ただ認める」という意識を持つことが大切です。
例えば、髪を切った人に対して「似合うね」「かわいいね」と声をかける場面。このとき大事なのは褒めることそのものではなく、「髪を切った事実に気づいた」こと、つまり「髪を切った」という事実を認めたという点です。
このとき、実は似合っていないと思っているのに「よく似合っているよ」なんて褒めるのはNG。こうした表面だけの薄っぺらい言葉にアダルトチルドレンはとても敏感です。表面上の褒め言葉を言ってしまわないよう、注意しましょう。
褒めることで救われるのは相手ではなく自分です。相手のためを思うなら、安易に褒めないように気を付けてください。
「同意する」のではなく「受容する」という意識を持つ
肯定や同意という言葉を、「否定しない」「反論しない」と勘違いしている人も多くいるようです。
しかし、人と人が話し合っていれば、同意できないことや反論したくなることが出てきて当たり前。そんなときに無理して同意するのは、さきほどの薄っぺらい褒め言葉と変わりません。
まずは「話してくれたことそのものが嬉しい」という意思を示すためにも、「話してくれてありがとう。あなたはそう思うんだね」と受容しましょう。
そのうえで、伝えたいことがあるなら「わたしはこう思うよ」と伝えるとよいでしょう。
「同情する」のではなく「共感する」という意識を持つ
どんなに辛い境遇を聞いたとしても、「それはかわいそうだったね」などと安易に同情してはいけません。
同情してはいけない理由は大きく分けて2つ。1つは「安易な同情は依存に繋がりかねないから」、もう1つは「同情しても何の助けにも支えにもならないから」です。
一言で言うと、同情は「あなたの立場から相手の立場を評価する姿勢」。それに対して共感は「相手の立場を理解しようとする姿勢」です。そこに評価や比較は存在しません。
同情するのではなく、共感する姿勢で話してみてください。
共感と同情の違いについては、下記の動画が非常に分かりやすいです。文章だけでは分かりづらいと思いますので、興味のある方はぜひ確認してみてください。
断るときははっきり断る。変に譲って自分の基準がぶれないように
同意や同情を求められたときなど、どうしても譲れない頼みごとをされてしまったときには、はっきりと断ることが大切。やんわりと、ではなく、「はっきりと」断ることが大切です。
断るべきときに断らないというのは言うまでもなくNGですが、やんわりと断りの意思を示すのも同じくらいNGなので注意しましょう。
あなたは断ったつもりでも、それが相手に伝わっていなければそれはミスコミュニケーションとなり、「なぜ伝わらなかったのか」「いつから伝わっていなかったのか」が分からなくなってしまいます。
相手のためを思って譲りたくなる場面もあるかもしれませんが、あなたの物差しがぶれてしまうと、相手はお手本となる基準を失ってしまいます。相手のためにも、断るべきときはきっぱりと断るようにしましょう。
自分自身もまたアダルトチルドレンであるかどうかを見直す
相手がアダルトチルドレンではないかと感じた時には、あなた自身もアダルトチルドレン的傾向がないかを見直しておくことをおすすめします。
とある研究によれば、実に8割以上の人がアダルトチルドレンというデータもあるほど、いまどきアダルトチルドレンの傾向は珍しいものではありません。確かに世代間で連鎖しやすいと考えられるものですから、決して大げさな数字ではないでしょう。
そう考えると、あなた自身がアダルトチルドレンだったとしても不思議はありませんし、「この人はアダルトチルドレンかも」と枠にはめて考えようとする考え方自体が、その傾向と言うこともできます。
あなたもアダルトチルドレンであるならば、あなたがそれを克服することで、相手にアドバイスできることもあるはずです。ぜひ前向きに自分自身をふりかえってみてください。
「普通は」「常識的に考えて」などの言葉が浮かんだら自分を疑う
自分をアダルトチルドレンと疑う目安としては、「普通はこうするだろう」とか「常識的に考えて彼の考えは間違っている」とか、そういった枠組みに当てはめて考えようとする言葉が浮かんだら気を付けた方がよいでしょう。
それだけを指してアダルトチルドレンだと言い切るはおおげさですが、そこに「あなたが育った環境で蓄積した思い込み」が潜んでいることは間違いありません。
心配な方は、こちらの特徴に当てはまらないか確認してみてください。
客観的な視点を提供する意識を持つ
アダルトチルドレンは視野が狭くなりがちなので、客観的な視点を提供するつもりでいろいろな話をする意識が大切です。
例えば我が家では、妻が体調を崩したりして自信を無くしているときには、「今日のあなたはこんなことをしていたよ」と客観的な事実を伝えるようにしています。無理に褒めるのではなく、事実を伝えることが大切です。
またそのほかにも、「せっかく頑張ったのに結果が出なかったらどうしよう」と悩んでいるときには、「なぜ結果がでなければいけないのだろう」「このぐらいの頑張りだとこの結果になる、というデータは取れるのではないか」など、できるだけ客観的な視点を提供できるように心がけています。
決めつけたり答えを与えようとしたりしない
アダルトチルドレンはただでさえ白黒思考になりがちなので、何か意見やアドバイスを求められたとしても、どちらかに偏った意見でなくなるべくグレーゾーンをたくさん提示することが大切です。
どうしても人にアドバイスするというと、なるべく正しそうな答えを提示したくなるのですが、それはあなたにとって答えに近いだけであって、万人にとって答えとなるかどうかは分かりません。
また、相手の個性などを勝手に決めつけて「あなたにはこういうやり方のほうが向いてる」などと誘導するのもNGです。
個人的な意見を言う場合も、「個人的にはこう思うよ。一般論ではこう考える人が多いかもしれないし、あるいはこう考える人もいるだろうね」と、なるべく並列で受け取ってもらえるように気を付けましょう。
他者評価に偏っているときは「あなたはどう思うの?」と引き戻す
アダルトチルドレンは、同年代の級友や兄弟などと常に比べられながら生きてきた人が多いので、大人になってからもついつい「あの人はあんなにうまくやっているのに……」などと比較してしまいがち。
また同様に、他人からの他者評価を軸に自分自身を評価してしまう節があるので、「あなたはどう思うの?」と引き戻すことが重要です。
なおわたしが妻によく言うのは、単純に比較することを否定するのではなく、「比較するなら十分に比較できるだけの材料を用意しよう」ということを伝えています。
あなたの頑張りはあなた自身が一番よく知っているように、他の人の頑張りもその人自身が知っているはずなので、こちらから見えるものだけを頼りに「自分のほうが頑張っている」などと比較しても仕方ないよね、という意味です。
表情や言葉など、表面だけで理解した気にならない
徹底的に話をする、の延長上にある内容ですが、話をするだけで終わりにしないように気を付けてください。
冒頭でもお伝えした通り、アダルトチルドレンは本音を表現する方法をよく知りません。そのため、話して話して話して、やっと奥に本音が見えてくるケースも多いです。
表面的な言葉の意味だけで理解した気にならずに、そう話している表情が曇っていないか、指先は震えていないか、声がいつもより上ずったりしていないか、ぜひ全身を観察してみてください。
家族を大事にしよう、などと気楽に言わない
アダルトチルドレンの原因は、機能不全家族です。その原因となった実家の家族に対して、「家族なんだから大事にしよう」だとか、「家族は助け合うものだから」などと言われるのは、アダルトチルドレンにとって苦痛でしかありません。
機能不全家族で育った人にとって、家族は自分にトラウマを植え付けた憎悪の対象であり、決して大事にしたい対象ではないのです。しかし、にも関わらず縁を切る勇気を出すこともできず、心の底ではいまだに愛してもらいたいと願っていたりもする、非常に複雑な関係性にあります。
あなたにとっての「家族」が、相手にとっての「家族」と同義とは限りません。こちらの常識や価値観を押し付けてしまわないよう、気を付けましょう。
過去を否定することによって自己肯定感を高めようとしない
アダルトチルドレンや機能不全家族と言うワードが出てこないにせよ、家庭環境が原因で自分はよくない形に育った、と思っている人は、過去を否定したがります。
「親が悪いから」「兄弟が悪いから」「いじめられたから」そういった過去に対して、「それはかわいそうだったね」と同情することは、その人のそれまでの人生を否定することになります。
そしてその期間が長ければ長いほど、「その時間、いったいわたしは何をやっていたのだろう」と否定のスパイラルに入ってしまいます。
ただし、過去に対して「その時間があったから今がある」と安易に肯定するのも危険です。
相手に治療の意思があるなら専門家を頼るのもひとつの手
本人が「こんな自分はいやだ」「生きづらくて苦しい」と感じているのなら、専門家であるカウンセラーを頼るのもひとつの手です。あくまでも本人が望んでいればですが、それが一番確実と言ってよいでしょう。
ただし、冒頭でも示した通り、アダルトチルドレンの問題の本質は「人間関係の築き方を知らないこと」にあるので、治すといっても一朝一夕でなにか改善するようなものではありません。
また、カウンセラーとの相性が悪ければかえって悪化する可能性もありますし、相性のよいカウンセラーを見つけることができたとしても、カウンセリングの進行度合いによって精神的に不安定になる時期もやってきます。
それらも含めて、もしカウンセリングを勧めるのであれば、専門家に丸投げする意識ではなく、あなた自身もある程度の知識を深めるつもりで臨むことをおすすめします。
自分自身が最優先であることを忘れない
徹底的に話をしてみたものの、やっぱり話が伝わらないし、何を言っているのか分からないということもあるでしょう。あるいは、言いたいことは分かるけれどあまりにネガティブな捉え方に辟易する、というケースもあると思います。
どんなにその人のためを思ったとしても、あなたの身体を壊してまで献身的に接することは、相手のためになりません。なぜなら、その関わり方は維持できないからです。
あなた自身がその人にとって支えとなるためには、あなたが安定した生活を送れることが最低条件です。そのため、あなたが精神的にも身体的にも、心と体を壊さないペースで接することを忘れないでください。
不安がある場合は、アダルトチルドレンである相手ではなく、あなた自身がいち早くカウンセリングを受けてみてもよいでしょう。
まとめ
今回は、わたしが実際にアダルトチルドレンの妻と生活する中で学んだ、アダルトチルドレンとの17つの接し方についてご紹介しました。
ちなみにわたしは、これらを妻と接するときだけに気を付けているわけではなく、会社での上司・部下といった関係や、友人関係などでも意識しています。
アダルトチルドレンかどうかは定かでなくても、今回の内容を参考にしていただくことで円滑になる人間関係もあると思いますので、共感された方はぜひ実践してみてください。
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