ストレスと上手に付き合っていくための方法、ストレスコーピング。ストレスを克服したり、小さくしたり、受け入れたり、といった形でストレッサー(ストレスの基)に対処する手法のことです。
今回は、そんなストレスコーピングについて、厚生労働省が提供するe-ヘルスネットに記載の情報をベースに解説します。
ストレスコーピングを身につければ、精神の安定や健康の維持にも繋がります。自分を取り巻くストレッサーや、すでに抱えたストレスに潰されてしまいそうだとお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ストレスコーピングとは
ストレスコーピングとは、職場での人付き合いや人間関係といったストレッサーに対して上手に対処しようとすることを言います。
基本的には、ラザルスという心理学者が提唱したストレスコーピング理論に基づいており、近年「自分でできるストレスマネジメント」といった文脈で話題となっているのが特徴です。
なお広義的には「気晴らしにおいしいものを食べる」「旅行へ行く」といった一般的なストレス解消法もストレスコーピングに含みますが、今回はe-ヘルスネットの内容に従って、
- 問題焦点コーピング
- 情動焦点コーピング
の2つに絞って解説していきます。
なお、気晴らしなどの直接問題解決には繋がらないストレスコーピングのことは、「回避型コーピング」と言います。
ストレスコーピングの種類
ストレスコーピングは、ストレッサーとの向き合い方によって大きく2種類に分かれます。
問題焦点コーピング:ストレッサーを直接どうにかする手法
問題焦点コーピングは、問題に焦点を当てる手法、つまり問題=ストレッサーそのものに働きかけることでストレスに対処しようとする手法です。
例えば対人関係で悩みを抱えている場合は、相手に直接働きかけて問題解決を図ります。
具体的には、上司からの小言や叱責が原因でストレスを感じている場合には、上司にそれをやめてくれるよう促すといった具合です。
社会的支援探索型コーピング:問題を一人で抱え込まないようにする手法
問題焦点コーピングの一種として、社会的支援探索型コーピング、という手法があります。
文字で見ると漢字だらけでなんだかよくわかりづらいですが、内容はかなりシンプルです。
社会的支援探索型コーピングは、問題を一人で抱え込まずに周りの人の協力を得るというもの。社会的支援、というのは、周囲の協力ということですね。
具体的には、上司からの小言や叱責が原因でストレスを感じているとき、その悩みを他の上司や同僚に共有する、といった具合です。
情動焦点コーピング:ストレッサーの感じ方をどうにかする手法
情動焦点コーピングは、ストレッサーに直接働きかけるのではなく、ストレッサーにより影響を受けた自分自身に焦点を当てて、感情をコントロールしようとする手法です。
具体的には、例えば上司からの小言や叱責にストレスを感じているなら、その話を周囲の人やカウンセラーなどに相談することで、感情を整理したり発散したりする、といった具合ですね。
身近なところでは、愚痴をこぼしてストレス解消するというのも情動焦点コーピング的側面があります。
認知的再評価型コーピング:ポジティブシンキングで前向きに受け止める手法
さらに情動焦点コーピングの一種として、認知的再評価型コーピングというものがあります。
これは情動の中でも特に「認知」に焦点をあてたもの。認知とは、モノの受け取り方や考え方、感じ方のことです。
認知的再評価型コーピングでは、ストレッサーの見方や考え方、感じ方などを変えることによってストレスを対処しようとします。
具体的には、上司の小言は本当に小言だったのだろうか?といったように、言葉を受け取った自分の感じ方や考え方を冷静に見直してみる、といった具合です。
ストレスコーピングの使い分け
ストレスコーピングは、ストレッサーに応じて使い分けるとより効果的です。
ストレッサーを変化させることができそうな場合には、ストレッサーに働きかける問題焦点コーピングが向いています。
一方、ストレッサーを変化させるのが難しい場合には、情動焦点コーピングのほうが効果が見込めるでしょう。
ストレッサーが変化できそうかどうかを見分けるコツは、「即座に物理的な解決が可能かどうか」というのをひとつの目安とすると分かりやすいです。
例えば、「口うるさい上司に悩んでいる」というケースでは、基本的に情動焦点コーピングのほうが適しています。
なぜなら、上司を説得することは言うまでもなく難しく、また上司の配置換えを望むなどしたとしても、それを達成するためにはその権限を持つ人を説得しなければならず、どちらも「物理的な解決はほぼ不可能」だからです。
一方で、「お腹が空いてイライラする」という状況では、考え方を変えるよりも食事をとった方が明らかに早いですよね。
これは極端な例ですが、「自分でできる」「すぐにできる」という点を重視すると、やはり状況を変えるより自分の気持ちを変えたほうが早いシーンは多いので、情動焦点コーピングのほうが重視されやすいと言えるでしょう。
今日からできるストレスコーピング
ここからは、実際に「今日からできるストレス対策」を意識して、具体的なストレスコーピングの方法を解説していきます。
セルフモニタリングのために「ストレス体験メモ」をつける
セルフモニタリングとは、言葉の通り「自己観察」のことです。
セルフモニタリングをする一番のメリットは、自分が無意識に抱えているストレスに気づきやすくなるという点にあります。
これは、今まさにストレスがかかっているという場面よりも、日ごろからできるストレス対策として使うものです。
ストレッサーは、ときに見えづらくなってしまうことがあったり、あるいは時と共に忘れてしまったりするので、メモの形で日ごろから言語化しておくことで、より冷静に見つめられるようになります。
ストレス体験メモが「情動焦点型コーピング」に繋がる
ストレス体験は、メモ用紙に書いてもいいですし、スマートフォンのメモアプリでも構いません。
「満員電車で足を踏まれて痛かった」
そして、そのときどう思ったかを続けて書きます。
「イライラした。悲しくもなった。泣きそうになった」
これらの感情をなかったことにしようとするのではなく、きちんと言語化することが重要です。
出来事と感情を書くだけでも、情動焦点型コーピングとして成立します。
コーピングの記録を取り成功体験を積み上げる
ストレス体験メモの効果は、その場で情動焦点型コーピングになるばかりではありません。
そこから「どのように立ち直ったか」という成功体験を蓄積することができれば、それは自分だけのコーピングリストになります。
満員電車で辛い思いをしても、帰り道にコンビニでケーキを買って帰ればちょっとだけ復活できる。
そういう選択肢をたくさん持っていると、ストレッサーに対して少しずつ強くなっていきます。
コーピングリストを普段から持ち歩く
作成したコーピングリストは、メモに書いて普段から持ち歩きましょう。
スマートフォンの待ち受けにしてもいいですね。
コーピングリストを作っても、いざストレッサーを前にしたときにいつも思い出せるとは限りません。
そのため、作ったコーピングリストはとにかく目に入るところに置いておくことが大切です。
番外編:いざとなったらすぐに逃げること
ここまでは「日常的にできるコーピング」を解説しましたが、「もしものときには徹底的に逃げるという選択肢を持っておくこと」がなにより大切です。
もしものときというのは、例えば死を思い浮かべるほどのストレスであるとか、もはや考えることもめんどうで思考停止してしまうときとか、そういった状況のこと。
そんなとき、「逃げる」という選択肢が本当に重要になります。
ここで言う「逃げる」とは、気晴らしなどの回避型コーピングという意味ではなく、もっと根本的な逃げです。
ストレスコーピングは、「ストレスコーピングがあればどんなストレスにも立ち向かえる」という類のものではありません。
そもそも、ストレッサーに常に立ち向かっていく必要はありません。
辛いときはきちんと逃げること。それを絶対に忘れないでください。
まとめ
ストレスコーピングは、決して難しい手法ではありません。
ストレスの基であるストレッサーと、ストレスがかかったときの自分に意識を向けることができれば、あとの対応はシンプルです。
しかし、いざストレスがかかったとき冷静に対処することが何よりも難しいのは、皆さん承知の通りでしょう。
だからこそ、普段からコーピングリストを作り、そのうえでさらに「逃げる」という選択肢を持っておくことが重要なのです。
ぜひストレスにやられてしまわないよう、お気を付けください。
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