脚本分析とは|人生を狂わせる12の禁止令と5つのドライバー

心理療法のひとつである「交流分析」の中のひとつ、「脚本分析」について解説します。

書き換えるべき脚本の代表例として、12の禁止令と5つのドライバーに関しても紹介しますので、交流分析や脚本分析に興味がある方はもちろん、現在生きづらさを抱えているという方にとっても参考になれば幸いです。

脚本分析とは

脚本分析とは、交流分析(TA)の中の理論・手法のひとつです。

脚本分析は性格に大きな影響を与えるものとして重視される理論で、人生は「人生脚本」に沿って演じられるドラマのようなものだと考えるもの。

人生脚本とは生まれ育った環境で培った価値観のことで、大半が親のメッセージによって形成されます。

幼少期(およそ6歳ごろまで)の価値観に従って人は生きるので、この価値観を明らかにしてアプローチすることで、悩みの根源となっている考え方などの改善を目指します。

脚本分析の目的は「禁止令」「ドライバー」を書き換えること

脚本分析の目的は、クライエントを苦しませている人生脚本の内容を、苦しまずに済むような内容へと書き換えることです。

そのとき、書き換える対象となる脚本の代表例として、禁止令とドライバーが挙げられます。

禁止令:「~するな」という命令による「してはいけない」という思い込み

禁止令とは、親から受け取ったメッセージのうち、「~するな」という指示・命令のこと。

これを大人になってからも無意識のうちに守ってしまい、「やってはいけないこと」と思い込んでしまっている状態です。

禁止令には、次のようなものがあります。

12の禁止令一覧

1存在するな「お前さえいなければ」というメッセージから、自分は居てはいけない(生きていてはいけない)と思い込まされ、自分の身体や命を大事にすることができなくなってしまう。
2成長するな,自立するな「まだ早い」「全部やってあげる」という過保護によるもの。子どものままのほうが愛されると思い込み成長できなくなる。
3成功するな「どうせ上手くいくわけがない」という思い込みから、成功しそうになると落ち着かなくなる。幸せ恐怖症。
4重要であるな「親の無関心」により、自分は重要であってはいけないと思い込む。目立つことを避け責任を嫌うようになる。
5自然に感情を感じるな痛みで泣いたときなどに「我慢しなさい!」と感情を抑圧された経験から、自然な感情を表現してはいけないと思い込む。無意識なので、感情を抑え込んでいる自覚も薄く表情も乏しくなりがち。
6健康であるな・正気であるな病気やけがをした時「のみ」優しくされた経験や、あるいは病弱な家族ばかりが関心の対象だったという経験から、不健康などにより同情や関心を引いたほうがよいと思い込む。暴飲暴食を繰り返すなど、自ら健康を害する傾向がある。
7仲間になるな「あの子と仲良くしてはいけない」といった形で親が友人を選んだり、「うちの子はそんなことはしない」などと親が子の気持ちを勝手に代弁することで、人と打ち解けて仲間になるというプロセスができなくなってしまう。
8実行するな具体的な理由なく「してはいけない」と自由を制限されることで、何かをしてはいけないのだと思い込む。誰かの許可がなければなにもできないようになってしまう。
9子どもであるな「兄・姉なんだからわがままを言ってはいけない」などの命令を受けて、年齢以上に強がることが当たり前になり子どもらしく楽しむのが苦手になる。他人の世話を焼いてばかりいる人に多い禁止令。
10近づくな(愛するな、信用するな)「近寄らないで」「あとにして」などと言って構ってもらえなかった経験から、人に対して一線を引いてしまいがち。心の底から人を信用することができず、友達・恋人などの人間関係における距離感が分からなくなる。
11おまえ(男、女)であるな「本当はこういう子どもがほしかった」「本当は女の子がよかった」といった命令により、自分のままではいけないと思い込んでしまう。同性に対する苦手意識があったり、自信過少で周囲の評価を気にしたりする。
12考えるな「考えても無駄」「私の言うことを聞いていればいいの」と親に考えることを禁止された子どもが抱える思い込み。自発的に物事を考えることができなくなり、与えられた情報を思考停止して受け入れがち。

ドライバー:「~しろ」という命令による「しなければいけない」という思い込み

ドライバーは禁止令とは反対に、「~しろ」という指示・命令による思い込みです。

禁止令の一種と考え「拮抗禁止令」と呼ぶ場合もあります。

禁止令同様、親からの指示で無意識に「そうしなければいけない」と思い込んで守ってしまっていると考えられます。

ドライバーには次のようなものがありますので、当てはまるものがないか確認してみてください。

5つのドライバー一覧

1完璧,完全にしろ「ちゃんとやりなさい」という命令によって、無意識のうちに完璧にやることが当然と思い込んでしまっている。自分にも他人にもそれを求め、評価が伴わないと落胆する。
2努力しろ「がんばりなさい」という命令によって、無意識のうちに一生懸命全力でやることが当然と思い込んでしまっている。一方で、努力さえしていれば結果に繋がらなくても一定の価値があると信じてもいる。
3人を喜ばせろ「みんなのためにやりなさい」という命令によって、すべての行動が他者評価中心になっている。他人に受け入れられず拒否されるとどうしていいか分からなくなる。
4急げ「早くしなさい」という命令によって、常に焦燥感を持って暇を持て余すと落ち着かなくなる。一方で、何かひとつのことをじっくりやり抜くことができず、何事も中途半端になりやすい。
5強くあれ「しっかりしなさい」という命令によって、しっかりしていない自分、弱い自分を否定する。感情的な脆さは弱さに繋がるとして、感情表現がうまくできなくなる。

禁止令とドライバーを書き換える方法

脚本分析の目標は「良い人生脚本」へと書き換えることです。

そのためまずは、さきほどの禁止令とドライバーのような悪影響をもたらす要素がないか確かめ、これらを見つけ次第書き換えていきます。

書き換える方法はシンプルです。

先ほどの表などを参考に、自分がとらわれている禁止令とドライバーに気づき、それらひとつひとつに対し「やらなくていい」「やってもいい」と許可を出していくだけ。

なおこのとき、書き換え対象とする要素は12の禁止令と5つのドライバーに必ずしも当てはまらなくとも構いません。

これらはあくまでも「こういう禁止令がありがち」という目安なので、これ以外にも明らかに人生脚本において悪影響をもたらしている要素があれば、それは書き換え対象と見なしたほうがよいでしょう。

禁止令・ドライバーに自分で気づく方法

人生脚本は幼少期に形作られた価値観のことであり、人はそれに従って生きていることに無自覚です。

そのため、現状に満足していないからといって容易に書き換えられるものではありません。

ではどうやって人生脚本を把握し、禁止令やドライバーに気づいていくかというと、もっとも確実な方法はカウンセリングなどを利用することです。

ただいきなり利用するのはハードルが高いでしょうから、まずは自分で禁止令やハードルに気づくことができないか、次のことにチャレンジしてみましょう。

「決断のパターン」から推測する

禁止令やドライバーが強く影響するのは、何らかの決断を下すときです。

私たちは、幼少期に下した決断のパターンを大人になってからも繰り返しています。

例えば「親に構ってもらう」という目的を達成するために、褒められようと頑張る子は「完璧・完全にしろ」などのドライバーをもつ可能性があるでしょう。

それらが一概に悪い影響を及ぼしているとは限りませんが、「決断のパターン」を知ることは自分自身の考え方・価値観を知るひとつのヒントになります。

「なぜそれを選んだか」を言語化する癖をつける

幼少期の決断パターンを思い返すだけで禁止令やドライバーに気づくことができた人は、その書き換えに取り組んでみてください。

しかし、幼少期の決断のパターンだけを振り返っても、よほど振り返り慣れていない限り価値観を正しく把握することは容易ではありません

そこで普段から、「なぜそれを選んだか」という理由を言語化する癖をつけておくのもおすすめです。

「迷ったこと」「決断したこと」からメモを始める

「なぜそれを選んだか」という理由の言語化は、いざやろうとすると結構難しいことが分かると思います。

そこでさらにハードルを下げるために、まずは迷ったことや決断したこと、それ自体の記録を付けるようにするのです。

就職・転職先で迷った、結婚するかしないか迷った、という大きなものから、ランチで何を食べるか迷った、なんてささいなものまでとにかく気づいた範囲でメモします。

これが習慣づいてくると、「ランチのときになぜ迷ったか」までだんだんと焦点が合うようになってくるはずです。

その裏には、一緒に食べる人が好きそうなお店を探していたから=みんなを喜ばせろ、というドライバーが潜んでいるかもしれません。

まとめ

交流分析の中の一つの理論である、脚本分析について解説しました。

12の禁止令や5つのドライバー一覧や、後半で紹介した自分で気づく方法なども参考に、自分自身の価値観に対する理解を深めてみてください。