他人の幸せを喜べない2つの心理と対策

「何か悪いことが起こればいいのに」「痛い目を見ればいいのに」

幸せそうな人を見て、その人のことが好きか嫌いかに関わらず、そんな風に願ったことはありませんか?

無関係な人ならともかく、大切な人や親しい人の幸せを素直に喜べないのはもやもやしますよね。

そこで今回は、他人の幸せを喜べない心理について、心理学の観点から解説します。

他人の幸せを喜べないのは「2つの思い込み」のせい

結論から言うと、他人の幸せを喜べないと悩むのは思い込みのせいです。ここで関係する思い込みには、大きく2種類あります。

まずひとつは「他人の幸せを喜ばなければいけない」という思い込み。

もうひとつが、「自分よりも他人が幸せになるなんて許せない」という思い込みです。

2つの思い込みについて、それぞれ掘り下げて解説していきます。

「他人の幸せを喜ばなければいけない」という思い込み

「他人の幸せを喜ばなければいけない」

そう思い込んでいなければ、そもそも「他人の幸せを喜べない自分は冷たい人なのだろうか……」なんて悩みませんよね。

そのため意識的か無意識的かに関わらず、「他人が幸せそうにしているときは喜ぶべきなのだ」と思い込んでいるのでしょう。

実際、「他人の幸せを喜べない」と悩む方は、社会的には優等生としてふるまわれている方が多いようです。

対策:人間は本能的に「他人の不幸を喜ぶ」感情があると知ること

「他人の幸せを喜ばなければいけない」と思い込んでいる方は、むしろ「他人の不幸を喜ぶ感情」が人間にはあるということを知るだけでも、少し気が楽になるかもしれません。

他人の不幸を喜ぶ感情のことをシャーデンフロイデと言います。

シャーデンフロイデは、子どものころから持ち合わせている本能だと考えられていますので、他人の不幸を喜ぶ感情そのものを否定しないでください。

シャーデンフロイデの詳細は下記記事で解説していますので、気になった方はあわせてどうぞ。

>>【人の不幸を喜ぶ本能】シャーデンフロイデの原因と対策

「自分よりも他人が幸せになるなんて許せない」という思い込み

「自分よりも他人が幸せになるなんて許せない」

前述の「他人の幸せを喜ばなければいけない」という思い込みに比べると、こちらは無自覚でそう思い込んでいる人が多いです。

この思い込みが形成された背景にあるものを、心理療法の一種「交流分析」では人生脚本人生態度と表現します。

用語の詳細は下記記事をご覧いただきたいのですが、人生脚本や人生態度とはひらたくいってしまえば「生まれてからこれまでの間に培われた思い込み」のことです。

特に、7歳ごろまでの経験が大きく影響すると考えられています。

>>交流分析とは|4つの基礎知識を解説【自我状態・人生態度・ストローク・対話分析】

対策①:まずは思い込みを自覚すること

「他人の幸せを喜ばなければいけない」と思い込んでいる場合よりも、「自分よりも他人が幸せになるなんて許せない」と思い込んでいる場合のほうが、少し心理が複雑だと考えられます。

前者は単なる「誤解」で済む場合が多いのですが、後者は「呪い」のように深く深く刻まれているケースが多いのです。

対策としては、まず思い込みを自覚することから。

「何か悪いことが起こればいいのに」「ひどい目に会えばいいのに」

ぼんやりそう思ったときには、ぜひその感情を大事にしてください。

くれぐれも、「そんな悪いことを考えちゃいけない」なんて切り捨てないこと。

対策②:「なぜ?」と理由を振り返る

思い浮かんだそれらの感情を、次に「なぜそう思ったのだろう?」と振り返ることが大切です。

そこにはたとえば、幼少期に親から認めてもらえなかった過去があり、「(自分が報われていないのに)他人が報われるのが許せない」という心理があるのかもしれません。

あるいは、「努力しなければいけない」といった思い込みにとらわれている人は、追い詰められることに価値があると信じているので、いわゆる棚ぼたのような幸せは認められなかったりもします。

このケースの場合、相応の努力をしている人の幸せはしっかり祝福できることも珍しくありません。

ちなみに、「~しなければいけない」という形の思い込みを、交流分析では「ドライバー(駆り立てるもの)」と呼びます。

これもいくつかの類型がありますので、似たようなドライバーにとらわれていないか、あわせてチェックしてみてください。

>>人生を狂わせる12の禁止令と5つのドライバー

対策③:「なぜ?」をひたすら繰り返す

一度や二度の「なぜ?」は、すでに試したことがある方も多いと思います。そこから、さらに「なぜ?」を繰り返してみてください。

  1. なぜ人の幸せを喜べないのだろう?
  2. わたしが他人の不幸を喜べないのはお母さんにそう育てられたからだ。
  3. 「わたしが他人の不幸を喜べないのはお母さんにそう育てられたからだ」と思うのはなぜだろう?
  4. 誰かがそう言っていたから、あるいは本で読んだからだ。
  5. 誰かの言っていたこと、本で読んだことを信じたのはなぜだろう?
  6. わたしが考えることよりも他の誰かの考えることのほうが正しいからだ。

⇒「自分はNG・他人はOK」の人生態度が見えてくる。

今回の例では「自分はNG・他人はOK」という、自己否定・他者肯定の人生態度が見えた時点でストップしましたが、もちろんここからさらに続けることも可能です。

可能、というよりも、ここからもっともっと掘り下げなければ、何をどう思い込んでいるか具体的には見えてきません。

対策④:「なぜ?」を日常的に考えることを止めない

「なぜ?」と繰り返す癖は、一度や二度試しただけではあまり意味がないのです。

事あるごとに、「そういえばなんでだったっけ?」と立ち止まって悩む癖をつけていきましょう。

悩む癖をつけるためには、普段からニュースなどの情報を鵜呑みにせず「なぜ事件が起きたのか?」といった原因を考えてみたり、自分が好きな物・嫌いな物に対する理由を言語化してみたり、といった日ごろからの訓練が必要です。

読書しているのになかなか考える力が身につかないという人は、それを人に伝えるために感想文を書いてみてもいいでしょう。

ちなみに文章を書くことは考えを深めるだけでなく、精神的な安定をもたらすこともわかっています。

参考The Psychological Benefits of Writing

まとめ

今回は、他人の幸せを喜べない心理について、2つの思い込みとその対処法を解説しました。

シャーデンフロイデという他人の不幸を喜ぶ本能があることを知るだけでも、少しは気が楽になるのではないでしょうか。

また、考えを深めたい方にはとにかく文章を書いてみることをおすすめします。誰かに伝えるつもりでインプットすると、ぐっと精度が高まりますよ。