気分一致効果とは|原因・対策・具体例・活用法まで

「気分がいいから何でも許せちゃう」なんてときもあれば、「機嫌が悪いからいつもは気にならないささいなことも目についてしまう」なんてときもありますよね。そんな経験、誰しもあるのではないでしょうか。

気分次第で印象が変わる心理現象のことを、気分一致効果と言って、心理学では人間は誰でもそういう心理を持っていると考えられています。

でも、それが自分のものであれ他人のものであれ、気分に振り回されるのはあまり気持ちがいいものではありませんよね。そこで今回は、気分一致効果を正しく理解して正しく活用する方法について解説します。

気分が落ち込んでいて、嫌なニュースばかり目に入ってしまうという方、あるいはいっしょに暮らす家族の嫌なところばかり目についてさらに気がめいってしまうという方は、ぜひ参考にしてください。

気分一致効果とは

気分一致効果とは、楽しい気持ちのときには楽しいことばかりに注目して辛いことや暗いことがどうでもよくなるのに対して、暗い気持ちのときには楽しいことに目を向けられず暗いニュースや記憶ばかり浮かんでしまう、といった心理効果のことです。

気分一致効果の範囲はとても広く、記憶、注意の向く方向、判断基準などにも影響を及ぼします。

また一部の研究では、気分一致効果とは反対に、気分不一致効果が起こることも確認されているようです。

こちらは、悲しいときや辛いときに、あえて前向きに考えたり楽しいことに目を向けたり、といったいわゆるポジティブシンキング的なニュアンスが強い心理効果です。

気分一致効果の起こる原因

気分一致効果が起こる原因のひとつは、動機づけの有無だと考えられます。

Erber & Erber(1994)は、気分を統制する動機づけがない場合に気分一致傾向があると指摘しています。

またParrot & Sabini(1990)の研究によれば、「それが気分の効果に関する研究である」と伝えなかった場合には気分不一致効果が見られたのに対して、研究内容を伝えた場合、特に素直な被験者は実験の意図に合わせて気分不一致効果を抑える傾向があると述べています。

  • 気分を統制する動機づけがない⇒気分一致傾向がある
  • 気分を統制する動機づけがある⇒気分一致傾向がない
  • 研究内容を知らない⇒気分不一致効果が見られた
  • 研究内容を知っている⇒気分不一致効果が見られなかった

二つの研究結果から考えられることは、ひとつは「無意識のうちに人は気分一致効果が働いてしまう」という点。

もうひとつは、他者の期待に応えようとして、あえて気分一致効果や気分不一致効果を操作する場合もあるという点です。

気分一致効果を対策するには、この無意識に働く心理に働きかえる必要がありそうです。

気分一致効果の具体例

続いて、気分一致効果の具体例を3つご紹介します。

テンションの高い通販番組

海外の通販番組やテレビショッピングなどを筆頭に、通販番組って全体的にとてもテンションが高いですよね。

出演者も観客も、番組の構成や演出も大げさすぎるくらいです。

これは、そのほうがすごそうに見えるから、といった演出意図ももちろんあるのですが、気分一致効果を狙っていると考えることもできます。

テンションの高い司会者のトークを聞いているうちに気分がよくなり、紹介されている商品もよいものに思えてくる

あるいは、楽しそうな人たちを見ているだけで楽しい気分になれるので、ついつい見続けてしまう、といった効果が期待できるのです。

テーマパークのお土産・飲食代

遊園地などのテーマパークで販売されているお土産や飲食店の料金に対して、「普段ならこんな値段で絶対に買わないのに」と思ったことはありませんか?

でも一方で、「あんな高いお金を払うなら買わなければよかった」と後悔したこともない方が多いのではないでしょうか。

テーマパークで気分が楽しくなっているときの買い物は、満足度が高くなりやすいのです。

これは、イーゼンが1978年に行った研究でも述べられています。

「ショッピングセンターで景品をもらって気分が前向きになった客は、自分の買った製品の満足度を高く評価した」のだそうです。

楽しい映画を観たあとの充実感

フォーガスとモイランが1987年に行った研究では、「楽しい映画を観たあとで実生活に関する質問をすると、肯定的な回答をしやすい」ことが分かっています。

楽しい映画に限らず、日常と少し違った楽しい体験をしたあとに、人生が充実しているような感覚を味わったことのある方は多いのではないでしょうか。

これらは、楽しい気分のときには実生活そのものが楽しく感じやすい、という気分一致効果によるものだと考えられます。

気分一致効果の活用法

次に、気分一致効果を理解して活用する方法について考えてみましょう。

気分がいいときに新たなことにチャレンジする

気分一致効果があることを理解すれば、気分がいいタイミングで新たなことに挑戦するのが有効だということもイメージしやすいでしょう。

気分がいいときの選択にはポジティブな印象を持ちやすいですし、気分がいいときなら大抵のことはポジティブに受け取めることができます。

そのため気分がいいときにチャレンジしたことは、かなり高確率で「やってよかった」と思うことができるのです。

続けたい習慣ほど、気分がいいときにだけやってみるというのもよいかもしれませんね。

頼みごとは気分がいいときにする

これは自分ではなく、他人と付き合う上で気分一致効果を活用する方法です。

上司・部下の関係で頼みごとをする場合や、親子や夫婦でおつかいや買い物を頼みたい場合などに、気分がいい時を選ぶというのも非常に重要。

ただ、いざ頼みごとをしたいときに都合よく気分がいいとは限りませんので、「ちょっと面倒な頼みごとをする場合は、その前に良い知らせをセットで用意しておく」とよいでしょう

気分が悪いときは何もしない

気分がいいときはなんでもポジティブに受け取れるのに対して、気分が悪いときはなんでもネガティブに受け取ってしまうのが気分一致効果です。

そのため、気分が悪いなと自覚したときは、あえて何もしない工夫も大切。

しかし何もしないというのも難しいので、できれば気分が悪いときのために「無心でできる何か」を用意しておくとよいでしょう。

私と妻は、無心でできるスマホアプリなどをやるようにしています。そのほかには、Amazon Prime Videoなどの動画配信サービスで、すでに内容を知っている映画を観るというのもおすすめです。

気分が悪いときは距離を置く

気分が悪いときはどんな言動も悪く捉えてしまいがちなので、他人はもちろん、SNSなど人の気配がするものから距離を置くことが必要です。

自分自身が気分の悪いときだけでなく、他人が気分の悪いときにも同様で、気分の悪い人に何を言っても伝わらないかもしれません。

そして、気分の悪いときに言われたことに対して感情的に反撃してしまった人は、そのことをあとあと悔やみます。

ですから、その人に後悔や罪悪感を抱かせないためにも、反撃しなければならないような状況はつくらないようにしましょう。

少なくとも、「気の持ちようだよ」なんてアドバイスで気分がよくなるなら苦労はしませんので、伝えられることが特になければ距離を置くことがなによりも助けになります。

まとめ:気分一致効果を対策するには

コロナの影響で、気持ちが落ち込んでいる方は多いと思います。そんなときに家族とずっといっしょに居ると、相手の悪いところばかり目に入ってしまいがちです。

散歩へ行く、トイレへこもる、部屋数が足りなければパーテーションで視界を遮ってみる、耳栓ホワイトノイズマシンで音だけでも遮断してみる、などなど、できる対策はひとつではありません。

対策アイテムについては、こちらの「HSPにおすすめの対策グッズ9選【通勤・職場・睡眠シーン別】」という記事で詳しく紹介しています。もともとはHSP向けにご紹介していたものですが、このご時世、きっとHSPに限らず役に立つはずです。

最近疲れているなとお悩みの方は、ぜひ合わせて参考にしていただければ幸いです。