喧嘩するほど仲がいいは本当?論文から学ぶ喧嘩の仕方と仲直りのコツ

「喧嘩するほど仲がいい」ってよく聞くけど、これって本当なの?そんな疑問を持った方々が研究を行った結果によれば、けっこう正しいみたいです。ただし、喧嘩ならなんでもいいというわけではありません。

今回は、「喧嘩するほど仲がいい」を調査した研究結果をもとに、いい夫婦喧嘩の仕方と仲直りのコツについて解説します。良好な夫婦関係を築きたいという方は、ぜひ参考にしてください。

喧嘩するほど仲がいいって本当なの?

まずは、「喧嘩するほど仲がいい」という俗説がどれくらい正しいのか、2つの研究結果をもとに考えてみましょう。

「喧嘩するほど仲がいい」を調査した研究結果

一つ目は、テキサス大学のリサ・ネフが行った研究です。

61人の新婚(結婚して6ヵ月以内)夫婦を対象に2年半に渡って調査した結果、結婚後の数ヵ月以内に中程度の喧嘩をして、それを乗り越えた夫婦はその後仲良く暮らしていける、ということが分かりました。

参考Stress resilience in early marriage: Can practice make perfect?[Neff, Lisa A.]

またもうひとつは、米国ベイラー大学のキース・サンフォードが行った研究です。

こちらの研究では、734人の既婚者及び同棲者を対象として調査を行った結果、喧嘩をするペアほど満足度が高かったことなどから、「喧嘩は有益である」という結論を導きました。

ただし、取るに足らない喧嘩ではなく意味ある喧嘩をし、さらに喧嘩をした状態から解決へとたどり着くこと、つまり仲直りすることが重要としています。

参考A latent change score model of conflict resolution in couples: Are negative behaviors bad, benign, or beneficial?[Keith Sanford]

重要なのは「①小さな喧嘩を繰り返して」「②仲直りをきちんとする」こと

2つの研究から、「喧嘩をして仲直りする」という一連の流れを経験した夫婦ほど、致命的な衝突をせず、満足度の高い状態を維持できることが分かります。

裏を返せば、喧嘩をしない夫婦ほど「喧嘩に対する免疫」がないため、いざ喧嘩となったときにそのまま離婚にまで至りやすいと考えることもできるでしょう。

というわけで、大事なのは「ほどほどの喧嘩をして」、それをきちんと解決して「仲直りすること」です。

「喧嘩するほど仲がいい」は喧嘩なら何でもいいわけではなく、「喧嘩をして仲直りして、また喧嘩をする」というサイクルが回っているからこそ良好なパートナーシップに繋がるわけですね。

いい喧嘩の仕方と悪い喧嘩の避け方

ではここからは、良好なパートナーシップを維持するために大切な「喧嘩の仕方」と「仲直りのコツ」をそれぞれ解説していきます。

日ごろから本心を小出しにすることを心がけて

いい喧嘩をするコツのひとつめは、とにかく不満を貯めないということ。

「こんなことを言ったら喧嘩になるかもしれない」と思っても、その言葉を飲み込む必要はありません。

不満は貯めれば貯めるほど大きくなるので、小さな喧嘩をするためには本心を小出しにしていったほうがいいのです。

この点を誤解して、「不満は抱いてはいけないものだ」とか、「我慢するのが当然だ」と自分を制限するようになると、その不満に耐えられなくなったときに爆発してしまいます。

その不満がたとえ喧嘩の火種になるとしても、それが爆弾になる前に日ごろから吐き出しておくことが大切なのです。

なお、本心を伝えることの裏返しとして、「相手の言葉もまた本心である」と受け止めることも大切です。変に勘ぐったりするのはやめましょう。

「本心を吐き出す=思ったことをそのまま言う」ではない

「本心を吐き出す=思ったことをそのまま言う」のとは違います。

こんなことを言ったら傷つくかもしれないとか、こんなことを言ったら誤解されるかもしれないと思ったのなら、内容はそのままに、より伝わる形に変えられないか工夫しましょう。

それが相手を尊重するということです。

もしも適切な言葉が見つからなければ、そのことを含めて伝えるようにしてみてください。

「こう思ったけれど、この表現が適切かは分からない。ただ言わないよりも言ったほうがいいと思うので伝えてみた。どんな風に言えばもっと適切に伝えられたか、意見が欲しい」

慣れないと難しいかもしれませんが、相手を尊重することが板に付けば、喧嘩に対する苦手意識はなくなっていくはずです。

相手が言っていない言葉を勝手に推測しない。憶測で物を言わない

口にした言葉だけを議論しましょう。

憶測で考えてはいけません。何か疑わしいことがあると思うなら、そのことをきちんと聞きましょう。

それもまた不満を貯めずに本心を伝えることの一環です。

傷つけるためだけの強い言葉を使わない

「こう言えば相手を傷つけることができる」などといった、相手を攻撃するためだけの強い言葉を使うのはNGです。

その言葉があなたの本心を表現するために必要ならさておき、攻撃だけを目的とした罵詈雑言を使ってしまえば、それは自分自身を攻撃することにもつながってしまいます。

このあたりは、喧嘩に限らず話をするうえで最低限守りたいルールでもあります。こうした話し合いのルールからしっかり考えたいという方は、「夫婦で話し合うときに守りたい7つのルール」も参考にしてみてください。

喧嘩に臨む姿勢を履き違えないこと。目的は「勝つこと」ではない

喧嘩になると、「相手に勝つこと」を優先目標にしてしまう人もいるのではないでしょうか。

しかしこの姿勢は、あらゆる喧嘩をあっさりと悪いものに変えてしまいます。自覚がある方は、絶対にやめてください。

喧嘩は、互いの譲れない思い=価値観が衝突した発露であって、その目的は「折り合いをつけること」です。形の違う価値観をすり合わせたときに起こる摩擦でしかありません。

摩擦が起こるたびに相手の価値観を折ろうとしていたら、そんな人とは一緒にいられなくなってしまいます。

お互いの価値観を柔らかくして、ぶつかったところをどんな形に納めていくか、その相談をする場が喧嘩だと思ってください。

自分の発言が「ゲーム」になっていないか疑う

悪い喧嘩を避けるためには、悪いコミュニケーションのパターンを知るというのが最も有効です。

例えば、交流分析という心理療法の中に「ゲーム分析」というものがあります。

ゲームとは、すればするほど互いが不快な思いをするコミュニケーションのことなのですが、やっている本人たちはそのことに気が付きません。

具体例をあげると、「お節介」などがそれに該当します。

良かれと思って世話を焼くものの、相手が自分の言うことを聞かなければ機嫌を損ねたり、あるいは感謝されないことに対して不満を抱いたり

その他にも、自分から相談しておきながら、相手の意見に対して「いや、でも」と反論ばかりするといった交流もゲームに含まれます。

ゲームが発展して起きてしまった喧嘩は、基本的にいい喧嘩にはなりません。

ゲームが多い場合、根本的な人との関わり方に問題を抱えるケースが多いです。心当たりのある方は、一度ゲーム分析について知識を深めてみるとよいかもしれません。

喧嘩後の仲直りのコツ

続いて、喧嘩をした後で仲直りするときのコツについてです。

自分に非があると思ったなら素直に謝る

喧嘩をした結果、自分にも非があると思ったのなら、その時点で素直に謝りましょう

人として当然のことですが、夫婦喧嘩となると案外できない方も多いのではないでしょうか。

いい喧嘩の仕方でも挙げましたが、喧嘩は勝ち負けを決めるためにするものではありません。

非を認めたら負けだとか、相手が言い返せなくなったら勝ちとか、そういう次元のものではないのです。

理由もはっきりしないまま「とりあえず謝る」はNG

素直に謝ることが大切な一方で、何に対して謝るのかもはっきりしないまま、ただ喧嘩の空気をそのままにしておきたくないからととりあえず謝るのはNGです。

「とりあえず謝れば解決する」を繰り返すと、喧嘩すれば謝っておけばいいのだ、と勘違いしてお互い癖になってしまいます。

もちろんお互いにそれで納得でき、その方法で本当に仲直りできるのであれば悪くないかもしれません。

でも実際には、仲直りではなく休戦しているだけの場合がほとんどでしょう。

その喧嘩の火種はくすぶり続けて、いつかまた発火します。

「白黒つける=仲直り」ではない。解決を急ぎすぎないこと

何度も言うように、喧嘩の目的は勝ち負けではありません。

どちらかの勝利が決まったら仲直りできるわけではありませんよね。それは仲直りではなく、屈服や服従といったニュアンスの方が近いでしょう。

ここを誤解していると、どうしても「喧嘩になったら何か決着をつけなければいけない」と思い込んでしまいます。

しかし実際の喧嘩はもっと複雑です。喧嘩の原因によっては、その場で話しきれないことだって珍しくありません。

そんなとき、「でも喧嘩を長引かせるのはよくないから……」なんて無理に納得したふりをするのはかえって話をややこしくしてしまいます。

納得できるまできちんと話し合うという共通認識を持っておきましょう。

妻が生理のときなど、タイミングによってはたまたま虫の居所が悪くて喧嘩になってしまったというケースもままありますよね。そんなときの対処法については、「妻の生理イライラ期に夫が取るべき8つの対策」も参考になると思います。

スキンシップなどで嫌いではないことを伝える

喧嘩をしてから仲直りに時間がかかる場合、喧嘩の時間が長引くことによる問題は、「お互いがお互いを嫌いになってしまった」ように感じられることです。

自分のことを嫌っている相手と時間を共にするのは苦痛ですよね。

そんな苦痛に耐えるために人は、自分を嫌う人を嫌いになるものです。喧嘩が長引くと、この連鎖でどんどんお互いのことを嫌いになってしまいます。

これを防止するためには、喧嘩をすることと嫌いになることは別物だと、お互いにきちんと認識することが大切です。

具体的には、喧嘩をしたあと仲直りをするまえにスキンシップを取るようにしてみてください。

まだ方法は分からないけれど、あなたのことが嫌いではないから仲直りがしたい。その方法をいっしょに考えたい。その気持ちをちゃんと伝えることができれば、きっと話し合えるはずです。

まとめ

「喧嘩するほど仲がいい」という俗説は正しいですが、一方でいくら喧嘩していても仲直りできないのであれば意味がありません。

また、喧嘩は喧嘩でも意味のない罵り合いはするだけ無駄ですし、仲直りも形だけならばやっぱりするだけ無駄です。

本心=自分の価値観を吐き出した結果の喧嘩こそが大切なものであり、そんな喧嘩は無理やり解決するものでもありません。

仲直りまでに時間が多少かかったっていいんだ、それでもこの人となら話し合える、そんな風に思える関係になることができれば、きっと喧嘩で悩むことはありませんよ。