「がんばってもうまくいかない」とお悩みの方は、ひょっとするとあなた自身ではなく、あなたに「低い期待」を寄せる人のせいかも。
それは実はゴーレム効果によるもので、誰かが「あなたにそんなことができるわけない」と予想したことによってパフォーマンスを発揮できなかったのかもしれませんよ。
今回は、そんなゴーレム効果に関する基本情報から対策法までを解説します。人の期待に応えようとしがちな方にこそチェックしていただきたい内容です。
目次
ゴーレム効果とは
ゴーレム効果とは、ある人に対する周囲からの期待が低いとき、その人のパフォーマンスも期待に合わせて低下する傾向にある、という心理効果のことです。
ゴーレム効果とは反対に、周囲の高い期待に合わせて高いパフォーマンスを発揮する場合は「ピグマリオン効果」とも呼ばれ、こちらは「教師期待効果」という分かりやすい別名も。
なお、ゴーレム効果やピグマリオン効果に対しては、
「科学的にきちんと実証されておらず再現性がないのでは?」
「教師や上司が不当に低い期待を持つべきではない、という心構えのようなものなのでは?」
といった指摘もあります。
ゴーレム効果の原因
ゴーレム効果が起こる原因としては、大きく2つ考えられます。
期待値によって眼差しや言動に差が生まれる
ゴーレム効果の反対、よい効果とされるピグマリオン効果の報告論文によれば、
「学級担任が子供達に対して、期待のこもった眼差しを向けたこと。 さらに、子供達も期待されていることを意識するため、成績が向上していった」
と主張されています。
どんなに平等な扱いを心がけたとしても、期待している人には丁寧に指導し、期待していない人はぞんざいに扱う、という扱いの差が少なからず生まれてしまう。
それこそがゴーレム効果やピグマリオン効果の原因なのではないでしょうか。
確証バイアスによりいい面が見えなくなってしまう
もうひとつ、ゴーレム効果をより強める原因として考えられるのが確証バイアスです。
確証バイアスとは、「自分の考えや信念を支持する情報ばかりを集めてしまう」という心理のこと。
確証バイアスに強くとらわれていると、「この人はきっと期待に応えないだろう」という自分自身の考えを支持する情報ばかり集めてしまうのです。
そのため、最初に抱いた予想を補強する出来事ばかりを記憶し、それによって期待傾向がさらに強まる。
すると態度にも表れるようになり、影響をより強く及ぼすようになる、といった連鎖が起こるのではないでしょうか。
ゴーレム効果の特徴
ゴーレム効果が厄介なのは、ひとたび起こってしまうと連鎖的にその影響が強まっていくという点です。
- 期待が低い
- パフォーマンスが下がる
- 下がったパフォーマンスに対してさらに期待値を下げる
- さらにパフォーマンスが下がる
- このループを繰り返す
このループを脱却するためには、どこかでゴーレム効果にとらわれた状態を意識的に壊す必要があります。
普段から他人に対して期待していないという人は、特に注意したほうがよいでしょう。
ちなみに、「自分はOK、他人はNG」あるいは「自分も他人もNG」という姿勢でいることに自覚のある方は、脚本分析における人生態度について押さえておくとよいかもしれません。
興味のある方は、下記記事もご覧ください。
>>交流分析とは|4つの基礎知識を解説【自我状態・人生態度・ストローク・対話分析】
ゴーレム効果の対処法
ゴーレム効果は、親と子、先生と生徒、上司と部下といった「指導をする側と受ける側」の関係で成り立ちます。
そのため対処法を考えるうえでは、指導をする側としての対処法、指導をされる側としての対処法を別々に考えることが大切です。
指導する側のゴーレム効果の対処法
まずは、指導する側としてゴーレム効果を避けるために気を付けたい心構えから見ていきましょう。
言葉づかいに気を付ける
一般的に、ゴーレム効果にとらわれやすい人は「批判ばかりしていて褒めることをおろそかにしている」と言われますが、これはあまり適切ではありません。
ゴーレム効果を避けようとして、無理に褒める必要はありませんし、ネガティブな評価をあえて避ける必要もないのです。
指導する立場であるからには、きちんと注意しなければいけないシーンも多々あります。
ただしそのとき気を付けなければいけないのが、言葉づかいです。
とっさの一言が厳しい言い方になってしまったのなら、きちんとその真意を説明するように心がけましょう。
言葉を尽くして説明する
指導する側になると、つい「余計なことを言いすぎないほうがいいんじゃないか」なんて気にしてしまいがちです。
しかし、これこそが誤解を生む原因になってしまいます。
言葉数が少ないと眼差しなどの非言語情報の割合を高めてしまうので、無意識に抱く期待値の印象がより強まってしまうのです。
指導する立場としてかっこがつかない、なんてプライドは捨てて、伝え方が下手でもなんでもいいのできちんと伝わるまで言葉を尽くすよう努めましょう。
悪いところに目をつぶり良いところに目を向ける
指導する立場になると真っ先に目を向けるのが、指導される側の「できていない部分」です。
できていない部分は伸びしろがある証拠なので、そこを見つけて改善したほうが早い。だから指導する側はどうしても悪い部分に目を向けます。
ところが悪い部分を見れば見るほどいい部分が目に入らなくなり、ゴーレム効果に陥る可能性は高まってしまうのです。
そのため、少なくとも信頼関係が構築できるまでの数か月間は悪いところに目をつぶり、良いところだけに目を向けるよう努力してみてください。
指導される側のゴーレム効果の対処法
続いて、指導される側のゴーレム効果の対処法です。パフォーマンスが周囲の期待に左右されてしまうという方は、次のポイントに気を付けましょう。
自分を評価していいのは自分だけだと言い聞かせる
指導される側がゴーレム効果にとらわれないためには、「自分を評価していいのは自分だけである」という強い信念が必要です。
他者から与えられる期待や評価には何の価値もありません。
自分の評価は自分が責任を持って行う。だから、他人から期待されるからがんばる、というモチベーションの持ち方をやめる。
これが、ゴーレム効果にとらわれないための第一歩です。
他人と比較しない
自分への評価を自分が責任を持って行うのと同様に、他人への評価も他人が自ら行うものです。
そのため、指導する側から与えられる期待や評価をもとに、自分と他人を比べるのもやめましょう。
指導する側の人間が、自分以外の誰かに期待をあらわにしていたとしても、それを理由にモチベーションを上下させる必要はありません。
「自分がやったこと」にフォーカスする
指導する人の期待や態度、他人との評価の違いなどを気にする前に、「自分が今まで何をしてきたか」に集中しましょう。
このとき、とにかく小さなものまで見落とさない意識が大切です。
朝、いつもより10分早く起きられた。
ご飯をいつもよりしっかり食べることができた。
通勤中にいつもより集中して本を読むことができた。
同僚からの質問に答えることができた。
夕飯を自炊して節約しつつ栄養もしっかり摂れた。
シャワーで済ませるところを今日はゆっくり湯につかることができた。
一つひとつはささいに思えるかもしれませんが、とても重要なことばかりです。
しかし、これらを他人が評価してくれることがあるでしょうか。あるいは、「この人はきっと早起きしてくれるはず」だなんて期待を向けることがあるでしょうか。
他人が期待することと、自分にとって大切なことは必ずしも一致しません。
自分がやってきたことを、自分でしっかり評価してあげてください。
しっかりと休息を取る
精神的にも身体的にも、疲労がたまっていると冷静な判断がしづらくなってしまいます。
「期待されていないからやる気が出ない」という感覚を少しでも感じたときは、しっかりと睡眠や入浴時間を確保して休むようにしましょう。
なお、ただのストレスだけでなく、HSPなどの気質も疲れの原因となっていそうだという方は、下記記事もご覧ください。
まとめ
ゴーレム効果は、予言の自己成就(思い悩みなどを自分で実現してしまう傾向)などよりも厄介な、無意識レベルの印象が相手に影響を与えてしまう心理効果です。
ピグマリオン効果として良い方向に作用すればいいですが、ゴーレム効果が連鎖すると「期待されない⇒結果が出せない⇒もっと期待されなくなる……」と悪循環に陥ってしまいます。
新人や部下、あるいは子どもにゴーレム効果を与えてしまわないために気を付けるとともに、自分自身もまた、他人からゴーレム効果を受けてしまわないよう、ぜひ気を付けてください。
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