野良猫や公園のハトに餌やりをする人の心理と対策

仕事の合間に散歩をしていると、河川敷の野良猫や公園のハトに餌をあげている人をよく見かけます。少し調べてみると「身内が餌やりをしているのでやめさせたい」といった方もいるようです。

なぜ野良猫やハトに餌をあげたくなるのでしょうか?

今回は、そもそも野良猫や公園のハトに餌をあげることがいいことなのかどうか、そしてなぜあげるのかという心理を考察したうえで、どうすればやめさせることができるのかについて考えていきます。

純粋に行動理由が気になっている方はもちろん、身近な人の行動をやめさせたいとお考えの方は参考にしていただければ幸いです。

野良猫や公園のハトに餌をやるのはいいこと?

まずはじめに、野良猫や公園のハトへ餌をあげることがいいことなのか悪いことなのかをはっきりさせておきましょう。

猫の餌やりは「やり方のマナー」さえ守れば悪いことではない

たとえばどうぶつ基金のホームページでは、次のように記されています。

野良猫(飼い主のいない猫)への餌やりは悪という認識のもとで、“無責任な餌やり”と言われることが最近よくあります。

では、“無責任な餌やり”とは具体的にどんな行為を指すのでしょうか?

放置された餌、投げ餌など、ご近所に迷惑をかける餌やりが、そう呼ばれているようです。

猫の餌やりは悪?|どうぶつ基金 ※太字装飾は筆者

もうひとつ、自治体の例として清瀬市のホームページに記載されている内容を見てみましょう。

猫が集まる時間が不特定だからと、エサを器に入れて放っておいてはいけません。置き餌は近隣地域から移動してきた猫まで居つかせる原因となり、カラスを呼び寄せたりゴキブリ、ハエを発生させるなど不衛生な状態にもなりがちです。

エサを与える場所と時間を決め、適量を器に入れ、食べ終わるまで見守ります。食べ終わったら速やかに片づけて、きれいに掃除もします。後になって他の猫が現れて餌をねだっても、その日は与えずに時間を守ります。数日で、猫たちは時間にあわせて姿を見せるようになります。

野良猫にエサやりをしている方へ|清瀬市 ※太字装飾は筆者

まとめると、猫に餌をあげること自体が悪いのではなく、置き餌などの迷惑行為がNGということですね。

また、不妊去勢手術が行われていないとどんどん増える一方なので、かわいそうだからと餌をあげるのであれば、まずはかわいそうな猫を増やさないためにきちんと不妊や去勢の手術をすることが大切です。

感情に流されて、安易に餌をあげることがないように気を付けましょう。

ハトへの餌やりは基本的にNG

猫への餌やりは「マナーさえ守れば決して悪いことではない」のに対し、ハトへの餌やりは基本的にNGなようです。

その理由は、日本鳩対策センターによると次の通りです。

鳩が待機していると、そこで糞をします。

エサをくれる人が来ると鳩が群がり、そこでも糞をいっぱいします。

衛生上良くないですよね。

鳩の糞は小さいため、乾燥すると風にのって舞い上がって、糞に含まれいる病原菌が人の肺などで増殖して病気を引き起こすことがあるんです。

小さな子供さんや免疫力の低下している方は特に注意が必要です。

鳩のエサやりをしてはいけない理由|日本鳩対策センター スタッフブログ

さらに自治体の例として、中野区のホームページに記載の内容も引用してみます。

人がハトに餌をやると、過剰に繁殖して生態系を乱すと共に、人間に対しても直接被害を与えます。その結果、有害な鳥獣として扱わざるを得なくなることは、人間・動物の双方にとって不幸なことではないでしょうか。 

(中略)

野鳥は、人間に感染する病気や寄生虫を持っていることがあります

健康な人はドバトの持っている細菌等に感染しても発病しないことが多いといわれていますが、高齢者や幼児など体の抵抗力の弱い人は注意が必要です。

ハトにエサを与えない|中野区 ※太字装飾は筆者

猫はもともと飼い猫なので、人が餌をあげないと生きていけないのですが、ハトにいたっては完全に野生化しているので、そこへ人間が餌を与えてしまうと生態系のバランスを崩してしまうのだそう。

ビルやマンションに巣をつくるようになると、糞による衛生的な被害も見過ごせません。

動物に餌やりをする心理

節度を守った猫への餌やりを除き、野良猫やハトへの餌やりはあまりいい結果を招かないことが分かりました。

続いて、「なぜ動物に餌やりをするのか?」という心理について考えていきます。

いいことをしているつもりである

真っ先に考えられるのは、純粋にそれがいいことだと思っているというケースです。

かわいそうな猫や、餌を求めて集まるハトの姿を見て、よほどお腹が空いているのだろうと餌をあげる。

このケースに関しては、餌をあげることによる影響をきちんと伝えるだけで考えが変わるかもしれません。

ただし、子どもならともかく、大人で「それだけが理由」で餌やりをする人は少ないかもしれません。

承認欲求を満たしている

マズローの欲求5段階説によれば、人間は下記の順で欲求を満たそうとすると言います。

マズローの欲求5段階説
  1. 生理的欲求
  2. 安全欲求
  3. 社会的欲求
  4. 承認欲求
  5. 自己実現欲求

生理的欲求とは、食欲や睡眠欲などの本能的な欲求。安全欲求とは、物理的・精神的に安全が保障されている状態を求める欲求のこと。そして社会的欲求は、何らかの集団に属していたいという欲求です。

これら3つが満たされた人は、次に承認欲求を求めます。承認欲求が満たされるためには、他者から承認・尊敬される必要があるのですが、これが日常の中で満たされないと人は「もっとちやほやされたい」と考えます。

餌をあげると動物は無邪気に寄ってきますから、この状況が承認欲求を満たしているのではないでしょうか。

子どもに言われるがままに、お菓子やおもちゃを買ってあげる心理に近いものがあります。

しかも野良猫やハトはわがままを言いませんから、承認欲求を満たすためのハードルが比較的低いと言えるでしょう。

他にやることがない

実は「他にやることがないからあげている」というケースも、往々にしてあるのではないでしょうか。

やりたくてやっているわけではないけれど、他にやることがないから仕方なく公園に来てハトに餌をあげることが習慣になっている。

このケースの場合、禁止の理由をどんなに説明してもあまり本質的ではありません。

さきほどのマズローの5段階欲求説で言えば、家庭や職場に居場所がなく、社会的欲求を満たそうとしていると考えることもできますね。

なお実際には、どれかひとつの理由で餌やりをしているというよりも、

せっかく何かをするなら誰かの役に立つことがしたい。その上ちやほやされるなら、自分も気持ちよくなれてみんな幸せだろう。

そんな具合に、複合的な理由から動物に餌やりをしているのではないかと考えられます。

動物への餌やりをやめさせるための対策

最後に、餌やりをやめさせるためにどうするべきか考えていきます。

「正しい知識」を共有すること

動物への餌やりをやめさせるなら、まずは「正しい知識」を共有することが大切です。

伝えるときのコツは、人間やあなた自身の都合を伝えるのではなく、あくまでも動物目線で話をすること。

「近所の人の目が気になるからやめて」では伝わりません。

それよりも、餌をあげることによって動物との共存が難しくなることがどんな悲劇を招くかを伝えたほうが、イメージしやすいでしょう。

人によっては、安易な餌やりがどれほどの損害につながっているかといった、お金の話にしたほうが伝わりやすいかもしれません。

たとえば日本動物愛護協会は、2020年春の分として不妊去勢手術費用1,200万円の助成をアナウンスしています。

各自治体がそれぞれ助成金を出していますので、それらがどれほどの金額にのぼるのか?そしてそれらがなぜ出ているのか?いっしょに考えてみると見方が変わるかもしれません。

参考街角に住む猫には、過酷な運命が待っている|東洋経済オンライン
参考飼い主のいない猫の不妊去勢手術助成事業|日本動物愛護協会

「役割」を与えること

もしも餌やりをしている理由が、「承認欲求(ちやほやされたい)」や「社会的欲求(他にやることがない、集団に属したい)」といった、人間としての欲求に起因しているのだとすれば、それは欲求を満たすしかありません。

例えば身内の方が動物の餌やりをしている場合は、まず家庭でなにか手伝ってもらうことはできないでしょうか。

もしもあなたが公園の管理をする側で、餌やりをする人に困っているのであれば、餌やりを禁止するのではなく、餌やりをしに来た人に別の仕事をお願いするといいかもしれません。

いっしょにゴミ拾いを手伝ってほしいとか、あるいは同じように餌をやりに来た人の話し相手になってあげてほしいとか。

そんな風に役割を持ってもらうことで、餌やりをしなくても欲求を満たせるようになるはずです。

まとめ

今回は、野良猫や公園のハトに餌をあげる人の心理について考察しました。

身近な人の行動をやめさせたいとお考えの方は、まずなぜやめる必要があると思ったのか、あなた自身の気持ちを確認してみましょう。

本当は社会的なマナーなどではなく、「みっともないから」「そういう人たちと関わってほしくないから」そんな理由かもしれません。

その理由が悪いわけではなく、一方的な都合を押し付けるだけでは人が行動を変えることはありませんので、「変えたほうが得をする」と思ってもらえる状況を作ることが大切です。ぜひ伝え方を工夫してみてください。

ちなみに、野良猫やハトへの餌やりを禁止する貼り紙を見かけますが、今回調べてみて「あれって逆効果かもしれない」とも感じました。

なぜなら、貼り紙のある公園とない公園があると、人は「この公園は禁止の貼り紙がないから餌をやってもいいのだろう」と考えるようになるからです。

恥ずかしながらわたしも、今回調べてみるまで禁止されている理由について深く意識したことがありませんでした。身近な人が餌やりしているところを見かけた暁には、今回調べたことをもとに話をしてみようと思います。

6件のコメント

傲慢な物言い、お前こそ承認欲求の塊!根性が腐っている!

エトロフさん、記事をご覧くださり、またコメントまでくださり本当にありがとうございます。

「傲慢」と感じられる言い回しだったとのこと、大変失礼いたしました。そのような物言いにならぬよう、今後一層気を付けてまいります。

また、「お前こそ承認欲求の塊」という指摘につきましては、恥ずかしながらおっしゃる通りです。誰にも求められない記事よりは、誰かに求められる記事を書きたいと思い、この記事も、「ハトに餌をやる人の心理」などのキーワードで検索する人が一定数いることを確認したうえで執筆しております。そういう意味では、私自身もハトに餌やりをする人とそう変わらないように思います。

根性が腐っているというご指摘もやはりその通りで、昔から自覚があり日々矯正しているところなのですが、なかなか自分で性根を叩き直すことは難しいようです。

年を取ると、このような声をかけていただける機会も貴重になりました。もしよろしければ、またお気づきになった点をご指摘いただけると幸いです。よろしくお願いします。

鳩に餌やりをしている人の心理が知りたくブログを拝見させていただきました。
餌やりの心理や、餌やりの正しい方法がわかりやすく、集中して読むことができました。
 また読者からのコメントに対し、相手の価値観を理解し、自分と他者の課題を分けて考える、アドラー心理学でいう 課題の分離 を猫しなさんは実践されている方だと感じました。
私はこのブログを読み「傲慢」と感じることはありませんでした。あくまでも私の想像であり、猫しなさんもお気づきではないかと思いますが、エトロフさんは社会的欲求、承認欲求が満たされず、自分の不満をこのブログにぶつけているだけなのではないかと感じました。もしかしたらエトロフさん自身、ハトや野良猫に餌やりをしているのではないかとも感じました。他の記事も読みたくPCホーム画面にこのブログのショートカットを追加させていただきました。
どうもありがとうございました。

ししまるさん。

過分な評価をいただき恐縮です。
課題の分離の実践については、自分自身できていないと思うからこそ日頃から意識していた部分でしたので、実践されていると評していただけるのは本当に励みになります。

こちらこそ、この度は記事をお読みくださり、コメントまでいただきどうもありがとうございます。

貴方が書かれている内容は単なる世論
で 貴方自身が観察や研究から生体に基づいた意見ではないと
判断しました
私は数年に渡り
調査観察をしていますので
事実に基づいてない文面を記載されている事に逆に貴方の価値やら
信頼に関わりますよ
批判も高まるでしょう
安易に
エサやりを
個人の見解を元に
知ってるふりは
おやめ下さい

新井さん。

コメントありがとうございます。
新井さんのおっしゃる通り、本記事は長年の観察や研究に基づいた研究成果などではなく、あくまでも私個人の考察した内容を示したものです。

実際にエサやりをされる方の心理を知っているかのように、誤解させる表現になっている箇所がありましたら大変申し訳ありません。

記事の内容を修正したいので、もしよろしければ「観察や研究から生体に基づいた意見ではないと判断」するに至ったデータや、誤解を与える表現について具体的にご指摘いただけると幸いです。
不躾なお願いで恐れ入りますが、よろしくお願いします。