「あの人が痛い目に会ったのは、きっとどこかで悪いことをしたからだ」「あの人が成功したのは、陰でものすごい努力をしたからに違いない」
そんな風に、根拠なく「成功や失敗にはもっともな理由がある」と思ったことはありませんか?こういった心理のことを公平世界仮説と言います。
今回は、公正世界仮説の原因と対処法、そしてメンタルヘルスに与えるポジティブな影響について解説します。
公正世界仮説について興味のある方は、ぜひご覧ください。
公正世界仮説とは
公正世界仮説とは、
良い結果を得た人はきっと良いことをしたはずだし、悪い結果を得た人は悪いことをしたのかもしれない
という思い込みのことです。
より具体的にいうと、たとえば夫婦のどちらかが家庭内暴力をふるっている家庭があったとき、暴力をふるわれるほうにも原因があったのではないか?、と勘ぐってしまう気持ちのことを言います。
公正世界仮説の原因
公正世界仮説の原因は、ひとえに「公正な世界」を人々が信じているからだと、メルビン・J・ラーナーは言います。
ラーナーが1960年代初頭に行った実験では、
「ある人が電気ショックを与えられている光景を目の当たりにした参加者は、初めのうちはその状況に同情するものの、しばらくすると電気ショックを受けている人を軽蔑するようになる」
ということが分かりました。
一方で、「電気ショックを受ける人は後から報酬を受け取る予定だ」と伝えると、軽蔑する傾向はなくなったと言います。
この実験結果から分かることは、私たちは「理不尽に人が傷つけられること」をそのまま受け入れるのには抵抗があるということ。
また、報酬の対価、あるいは罪に対する罰として人が傷つけられるならそれは仕方ない、と受け入れられるのです。
非人道的な仕打ちそのものよりも、その背景にある理由を気にするんですね。
公正世界仮説の特徴
公正世界仮説には、公正世界仮説を信じていない人よりも公正世界仮説を信じている人のほうが幸福度が高い、という特徴があります。
研究によっては、公正世界仮説は生活安全度と幸福度を高め、抑うつ的な感情を減少させる、というメンタルヘルスにおけるポジティブな効果も確認されています。
「頑張れば報われる」と思っている人のほうが、「頑張っても報われない」と思っている人よりも幸福度が高い
こう言い換えると、あまり違和感はないかもしれませんね。
この通り、公正世界仮説は決して悪い思い込みではありません。
公正世界仮説が問題となるのは、不公正な出来事に直面したときに、合理的でない考え方や解釈を行ってしまった場合です。
公正世界仮説の対処法
公正世界仮説を悪い方向へ作用させないために、次のことに気を付けましょう。
目の前の現実を否定しないこと
公正世界仮説を信じるあまり、理不尽にひどい目にあう人や状況を見なかったことにしてしまう場合があります。
そんなことはあり得ない、と現実を否定するのではなく、なぜそうなったのか、に冷静に目を向けられるよう注意しましょう。
そばにある出来事から目をそらさないこと
同じように、そばにある悲惨な出来事から目をそらしたり、あるいは近づかないようにしたりして、自分の世界に取り入れないようにするケースも往々にしてあります。
これはたとえば、学校のクラスメートの間でいじめがあることに気が付いていても、現場さえ目にしなければなかったことにできる、といった具合です。
自分が見なかったからといって現実が変わるわけではありません。
公正世界を信じるならなおのこと、勇気をもって現実を直視して、行動を起こす必要があるでしょう。
勝手な解釈をしないこと
悲惨な出来事を目の当たりにしたときに、その場にある現実以外の事情を勝手に想像して解釈することはやめましょう。
仮にいじめの事実があった場合、なぜいじめられているのか、という理由がなんなのかはあまり関係がないのです。
理由がなんであれ、いじめをすることがいいことであるはずはありません。
勝手な解釈をして自分を無理やり納得させようとしたときには、ぜひ勝手な解釈をしないよう気を付けてください。
合理的な対応を考えること
現実を否定せず、目をそらさず、勝手な解釈をしない。
そのうえで、合理的な対応を取ることが大切です。
合理的な対応とはたとえば、次のような考え方を心がけること。
- 世界は不公正であるという現実を受け入れること
- そのうえで少しでも公正になるよう努めること
- 個々の人間の限界を受け入れること
特に大切なのは、世界は不公正であるという現実を受け入れることです。
世界は不公正だからこそ、人間が公正に保つための努力をするのだと考えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
公正世界仮説についてまとめましたが、正直なところ、こんな記事1つでは伝えきれないほど「公正世界仮説」「公正世界信念」といった感覚への解釈は奥深いものがあります。
興味のある方は、ぜひご自身でも研究内容などをひも解いて見ることをおすすめします。
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