この記事では、社会心理学の用語であるハロー効果について、その概要・具体例・実験例などを解説します。
ハロー効果は、マーケティングなどでも利用されることの多い心理現象です。その原因と対処法、あるいは有効な使い方を学んで、ぜひ日常で役立ててください。
目次
ハロー効果とは
ハロー効果とは社会心理学の用語で、何かを評価するときに直接関係のない特徴によって評価が歪められてしまう心理現象のことを言います。
ハロー(Halo)は「後光」「円光」といった意味で、後光が差しているとありがたく思えることからこのように呼ばれています。
ハロー効果には、よい特徴に全体の評価が引っ張られる「ポジティブ・ハロー効果」と、逆に悪い特徴に全体の評価が引っ張られる「ネガティブ・ハロー効果」とがあります。
ポジティブ・ハロー効果が一般的に言われるハロー効果のことで、ネガティブ・ハロー効果はその逆。ちなみにハロー効果を命名した学者は、ハロー効果とは逆の効果のことをデビル効果と命名したそうです。
- 好感度の高い芸能人が勧めている商品だからきっと安心だろう
- 好感度の高い有名人と知り合いなら信頼できる人なのだろう
- 身なりがしっかりしているから仕事もできるはず
- 不祥事を起こした芸能人をCMに使っていた商品なんて信用ならない
- しわだらけのシャツを着ているなんてだらしない。信用できない人だ
- 約束の時間に遅れるなんて、普段から仕事ができないのだろう
例をご覧いただくと分かる通り、ハロー効果は、それと気づかずに印象に影響を与えているケースも珍しくありません。
テレビコマーシャルや選挙活動、営業・広告など、よりよい印象を与えたいシーンで意識的に利用されることの多い認知バイアスの一種です。
ハロー効果の原因・発生する理由
ハロー効果は、いわば人や物を見た目で判断する性質のことなのですが、一般論として「人は見た目で判断してはいけない」と言われますよね。
それなのになぜこのような心理現象が発生するのかというと、これは生存本能が原因ではないかと考えられます。
たとえば危機的状況に陥ったとき、いちいち論理的に考えていたら間に合わない場面で、より確実性の高い選択をするために備わっているのではないか、ということです。
物事を瞬間的に判断することで、生存に有利な選択をするための機能であり、またそれをしてきた人類が生き残ってきたからこそ本能として備わっているのではないかと考えられます。
道端で刃物を持っている人がいたらそれだけで警戒しますが、台所で包丁を持っていても普通に感じますよね。そういう「他とは違う特徴」を顕著に察知するのがハロー効果というわけです。
ハロー効果の実験例
ハロー効果の影響をより具体的にイメージしやすいよう、ハロー効果の研究で行われた実験や論文を簡単にご紹介します。
アッシュの「印象形成実験」
一つ目は、ハロー効果によってどれだけ印象が変わるかを分かりやすく示した、アッシュの印象形成実験です。
実験では、ある人の特性について次のリストを見せた時の印象の違いを観察しました。
A1:知的な、腕が立つ、勤勉な、温かい、てきぱきしている、実際的な、注意深い
B1:知的な、腕が立つ、勤勉な、冷たい、てきぱきしている、実際的な、注意深い
A2:知的な、勤勉な、強力な、非難的な、頑固な、嫉妬深い
B2:嫉妬深い、頑固な、非難的な、強力な、勤勉な、知的な
A1とB1のリストでは「温かい」か「冷たい」かの違いのみ、A2とB2のリストでは提示する順序の違いのみ、という差でどれほど印象に差が現れるかを観察した実験です。
結果は、1も2も、Aは「欠点はあるが能力のある人」と映ったのに対し、Bは「欠点があるため能力はあるけど残念な人」と映りました。
この実験から、1のリストが「たった一言で印象が大きく変わる」ことを表しており、2のリストが「提示する順番で印象が大きく変わる」ことを表しているのが分かるでしょう。
フランスで行われた実験例
こちらはフランスで行われた社会実験の様子です。
内容は、「ホームレス風の人が道で倒れた場合」と「サラリーマン風の人(スーツ姿)が道で倒れた場合」では、道行く人の反応は違うのか、というもの。
結果は、ホームレス風の人が5分以上倒れていても誰も声をかけなかったのに対し、サラリーマン風の人が道で倒れた場合はすぐに声をかける人が現れました。
ホームレス風の人を見た時には、経験則などから「面倒ごとに巻き込まれたくない」といった心理が働き、助けるのが遅れたのだと思われます。
しかし実際にその人が面倒ごとを抱えているかどうかは、服装を見ただけでは分かりませんよね。これも立派なハロー効果の一種です。
テレビで行われた実験例
日本テレビの番組「所さんの目がテン」で行われた実験では、「面接試験の結果に見た目の良し悪しはどのように影響するか?」を検証しました。
番組の中では、モデルの女性2名・一般女子大生2名の計4名に面接を受けてもらった結果、モデルの女性2名が採用という結果に。
面接という時間の限られた状況では、内面的な人となりを評価することは難しいため、見た目や立ち振る舞いといったわかりやすい特徴が反映されるのかもしれません。
ハロー効果の具体例
実験例以外にも、ハロー効果を確認できる例は数多くあります。シーンなどは限定せず、ざっくばらんに日常生活で確認できるハロー効果の具体例を紹介します。
- ビルやWebサイトが立派な会社は、事業内容も立派に感じられる
- カスタマーサポートなどが不親切だと、そのサービス内容自体もよくないものに感じられる
- 好きな女優・人気女優が使用している化粧品をつい選んでしまう
- 字がきれいな人は頭がよく見える
- 足が速い人はかっこよく見える
- 野球が得意な人はサッカーも得意に思える
- 教師や医師といった職業に就く人は有識者や人格者である
- 笑顔が穏やかな人は子どもが好きそうに見える
- 誰かに優しくしている人は誰にでも優しいように思う
- 学歴が良い人は頭がよい・学歴が悪い人は頭が悪い
- 美人だから性格もいいに違いない(逆もしかり)
- いつもよれよれのシャツを着ているからお金を持っていないのだろう
- きれいな人だからきっと住んでいる部屋も清潔なのだろう
ハロー効果の対策
具体例を見ていただくと、ハロー効果がいかに日常的に発生しているかがお分かりいただけたかと思います。
マーケティングなどではこれを利用して、たとえば子ども向けの商品には子ども向けのデザインを施したり、子ども向けのキャラクターを起用したりすることで、販売促進につなげています。
しかし、ハロー効果に惑わされて困る場面が多いのも事実。そこで、ハロー効果を意図的に対策する方法についても覚えておきましょう。
その方法とは、大きく分けて3つ。
- ハロー効果が起こる状況を知る
- 評価基準を明確にする
- 評価するのに十分な記録を取る
それぞれ解説していきます。
①ハロー効果が起こる状況を知る
こういうときにハロー効果が起こりやすい、という状況を知っておくだけで、無意識に発生する先入観や思い込みの大半を排除することができます。
この点に関しては、この記事で紹介した事例を何度も反すうしながら、日常で意識して生活すれば十分です。
「ああ、こんなときにもハロー効果が起こっていたんだな」と知れば知るほど、次回から惑わされにくくなりますよ。
②評価基準を明確にする。できれば順番も
ハロー効果を防ぐためには、「なぜその評価を下したのか?」という評価基準を明確にすることが大切です。
たとえばあなたから見て、「優しい」と思う人に対して、「なぜそう思うのか」考えてみてください。
席を譲ってくれたから?仕事を代わってくれたから?議論のときに味方をしてくれたから?いろいろな理由があると思います。
では反対に、あなたから見て「優しくない」と思う人が同じことをしてくれたら優しいと感じるかを考えてみましょう。
同じことをしてくれたはずなのに、「たまには珍しいこともあるものだ」とでも受け取ってしまうのではないでしょうか。私たちの印象は、それぐらい矛盾に満ちているんですね。
評価するのに十分な記録を取る
ハロー効果に惑わされないためには、評価するのに十分と言える記録を用意しておくことも重要です。
ある人の一面を見て「素晴らしい人だ」と判断しても、総合的に見ると決してそうとは言えない場合もままあります。その人が素晴らしいのではなく、素晴らしいと思える行動を取っただけなのです。
一部分・一側面・一時点だけを切り取って評価するのではなく、客観的な評価をするのに十分な記録を取る意識を持ちましょう。
まとめ
ハロー効果は、日常生活の中で広範に影響を与える認知バイアスの一種です。ハロー効果のことを知るだけでも、先入観や思い込みによる選択の失敗を防ぐことができるでしょう。