【責任転嫁の原因】自己奉仕バイアスの具体例と対策

成功したときは自分を褒めるのに、失敗したときは誰かのせいにしてしまった経験、ありませんか?「責任転嫁」や「他責」と言われることもありますが、この考え方の癖を「自己奉仕バイアス」と言います。

今回は、そんな自己奉仕バイアスの具体例を紹介するとともに、どうやって自己奉仕バイアスを防ぐかという対策方法について解説します。

また自己奉仕バイアスに似た認知バイアスについても触れますので、興味のある方はそちらもあわせてチェックしてみてください。

自己奉仕バイアスとは

自己奉仕バイアスとは、「成功は自分のおかげだけど失敗は人のせいにしがち」という認知バイアスの一種です。

自分のことを棚に上げる傾向があるため、棚上げバイアスと考えるとわかりやすいかもしれません。

また成功したときは自分が頑張ったからだと捉えるのに対し、失敗したときは自分にとって不利な条件を求める(自分が外的要因によって失敗したことを証明し非難を避けようとする)ことから、自分に自らハンデを与えるセルフ・ハンディキャッピングとも呼ばれます。

このバイアスは組織や集団単位でも起こりやすいため、集団奉仕バイアスと呼ばれることもあります。

自己奉仕バイアスの具体例

それでは自己奉仕バイアスの具体例を、3つのシチュエーションから見ていきましょう。

3つのシーンに対してそれぞれ、「他人の成功」「他人の失敗」「自分の成功」「自分の失敗」のパターンを例示していきます。

どういったときに自己奉仕バイアスにとらわれてしまっているか、ひとつずつ確かめてみてください。

①仕事がうまくいく原因・うまくいかない原因

  • 他人の成功:あの人は上司に助けてもらったから成功した
  • 他人の失敗:あの人は要領が悪いから失敗した
  • 自分の成功:私は要領よく頑張ったから成功した
  • 自分の失敗:私は上司の指示が悪いせいで失敗した

仕事の成果に対する原因として、「上司」という外的要因をどのように捉えているか、また「要領のよさ」という内的要因をどのように捉えているかに差があります。

「他人=あの人」の成功は上司のおかげだと捉えるのに対して、自分の失敗は上司のせいだと捉える。反対に他人の失敗は本人のせいだと捉えるのに対して、自分の成功は私が頑張ったおかげだと考える。

このとき、上司以外の外的要因としては「会社」「同僚」「環境」「道具」などが当てはまります。

内的要因には「要領のよさ」のほか、「技能」「経験」「知識」などを当てはめて考えてみるとよりイメージが湧きやすいでしょう。

②組織・集団がうまくいく原因・うまくいかない原因

  • 他人の成功:あの会社は時代がよかったから成功した
  • 他人の失敗:あの会社は企業努力が足りないから失敗した
  • 自分の成功:自分の会社は企業努力により成功した
  • 自分の失敗:自分の会社は時代が悪かったから失敗した

たとえば、バブルのころに儲けたという人の話を聞いて、「それは時代がよかったからでは?」と思ったことはないでしょうか。

他社の成功と自社の失敗は「時代」という個人ではどうしようもないもののせいにする一方で、他者の失敗と自社の成功は「努力」という非常にあいまいな内的要因に委ねてしまいがちです。

③納得できる評価の原因・納得できない評価の原因

  • 他人の成功:あの人は上司に好かれているから評価が高い
  • 他人の失敗:あの人は仕事をさぼっていたから評価が低い
  • 自分の成功:自分はまじめにやっていたから評価が高い
  • 自分の失敗:自分は上司に嫌われているから評価が低い

仕事における評価に関わらず、好かれている・嫌われている、といった感覚もついつい判断材料として含めてしまいがちです。

学校では「先生」が「特定の生徒」をひいきしているように感じたり、家庭では「両親」が「特定の兄弟・姉妹」を好いているように感じたり。

それらが事実であるか確かめないうちに、安易に原因を決めつけてしまわないように注意しましょう。

自己奉仕バイアスの対策

具体例の通り、自己奉仕バイアスはとてもありふれたもので、いわゆる責任転嫁や他責思考と言われるような発想はこのバイアスが原因だと考えられます。

ではどうすればこの自己奉仕バイアスの考え方を脱却することができるのか、続いて対策法を解説します。

常に情報の不足を疑う

まずは、自分に見えている世界がすべてではないと知ることが大切です。

例えば誰かの評価が高いのは、自分が知らないだけで陰で何か成果を出しているからかもしれません。

中には、実際には見えている(視界に入っている)はずなのに無意識に見て見ぬふりをしてしまっている情報もあるはずです。

ぜひ注意深く、情報が不足していないか疑ってみてください。

特定の何か・誰かを原因とする犯人捜しをやめる

答えはひとつだ、と考えるのをやめましょう。 いつだって原因はひとつとは限りません。

むしろ、原因がひとつであることのほうが稀です。同様に、何かの失敗やミスが、誰かひとりの犯人の手によるものであることもまずないと言ってよいでしょう。

「自分にその出来事が起こったら?」と他者目線で考える

「自分がその人だったら」ではなく、「自分にその出来事が起こったら」 とか「自分がその人の立場だったら」と考えるものを相手目線・他者目線と言います。

なぜ他者目線有効かというと、「他者の成功」と「自分の失敗」、「他者の失敗」と「自分の成功」したときで、注目しているポイントが似通っているため。

例えば先ほどの例の「仕事がうまくいく原因・うまくいかない原因」では、次の点に注目しています。

  • 他者の成功 / 自分の失敗:上司という「外的要因」
  • 他者の失敗 / 自分の成功:要領のよさという「内的要因」

このことから、他者の成功は外的要因を重視しがちなので自分の成功に置き換えることで内的要因にも注目し、自分の成功は内的要因を重視しがちなので他者の成功に置き換えることで外的要因にも目を向けることができるのです。

自己奉仕バイアスに似た認知バイアス

自己奉仕バイアスは、「あいまいな情報を自分にとって都合のいいように解釈する」という認知バイアスとしてはとてもポピュラーなもので、近しい認知バイアスも数多くあります。

一例は次の通りです。こういった認知バイアスが潜んでいることを把握するだけでも、多少は思い込みを防ぐことができるでしょう。

自己奉仕バイアスに似た認知バイアスの例
  • 公正世界仮説:不合理で非論理的な悲劇や成功に対して、相応の理由があったのだと信じるバイアス
  • 根本的な帰属の誤り:自分が失敗したときは外的要因のせいにするのに対して、他人が失敗したときはその人の性格に原因を帰属させるバイアス
  • ダニング=クルーガー効果:能力の低い人ほど自分を過大評価して、能力の高い人ほど自分を過小評価する傾向あるバイアス

まとめ

以上、自己奉仕バイアスの基本的な解説と具体例、そしてどのように対策していくかをご紹介しました。

今回自己奉仕バイアスの対策としてあげた3つの方法は、いずれもあらゆる認知バイアスに対して有効だと言える方法ですのでぜひ試してみてくださいね。