「毒になる親」という言葉を知り、自分が子育てをするうえで毒親になってしまわないか心配になってきた……。そんな悩み・不安を抱える方のために、今回は毒親にならないためにできる10のことについてまとめました。
あわせて毒親の主な傾向として知られる4タイプについても解説しますので、あなたや、あるいはあなたの親がこの傾向に当てはまっていなかったかもあわせてチェックしてみてください。
毒親とは
まずは毒親にならないためにできることを考える前に、そもそも毒親とは何なのか、言葉の定義からさかのぼって考えていきます。
毒親の意味|「毒と思えるほど」子どもに悪影響を及ぼす親のこと
毒親とは、「毒になる親」の略で、毒とたとえられるくらいの悪影響を子どもに及ぼす親のことを言います。
概念としては「毒になる親」という書籍の中で使われたのが初めてで、文中では「子どもの人生を支配し、子どもに害悪を及ぼす親」を指す言葉として使われました。
毒親の定義|「継続的に」悪影響を及ぼし続ける親のこと
著者であるスーザン・フォワードは、この世に完全な親などいない、という見解を示しています。
ときには大声で子どもを怒鳴りつけることもあれば、コントロールしようとしてしまうこともあるし、頭をはたいたりお尻を叩いたりすることもあるでしょう、と。ただ、それらはすべて「普通の親だ」と言います。
毒になる親は、「それらが執拗に継続し、それが子どもの人生を支配するようになってしまう親」のことを指すとしました。
毒親にならないために|子どもと向き合う姿勢を常に考え続ける
毒親の定義が「子どもに悪影響を継続的に及ぼし続ける親のこと」であるならば、こうした存在にならないための対策はシンプルです。
今の接し方が子どもにとって悪影響ではないかどうか、常に考え続け、そして改め続けるしかありません。
毒親に該当する行動を起こす親たちは往々にして、ひとつの正解を見つけるとそれに縛られ続けます。そして自分が縛られたその鎖でもって、子どももまた縛り付けてしまうのです。
あなたにとって正解だったことが子どもにとって正解かは分かりませんし、その当時正解だったことが今の時代においても正解かどうかは分かりません。
自分の常識と、子どもに対する接し方を疑い続けましょう。
そういう意味では、「毒親にならないためにはどうすればいいか」と悩んでいる人は、すでに毒親に該当する可能性は低いと言えるかもしれません。
まず毒親には4つのタイプがあることを知る
毒親にならないためには、自分の常識や子どもに対する接し方を気を付ければよいことが分かりました。次に、具体的にどういった点に気を付けていくべきか、毒親と呼ばれる親の行動形態についてさらに掘り下げて考えていきます。
まず、毒親にはいくつかのタイプがあることを知りましょう。今回は、「アダルト・チルドレン」の概念を日本へ導入した精神科医である、斎藤学さんの提示する4つのタイプを元に解説していきます。
過干渉・統制する親|コントロールされ続けて自由意志が損なわれていく
過干渉な親は、子どものすることなすことすべてに口を出して手を出して、思った通りの方向へ動かそうとします。
子どもの習い事を勝手に決めたり、入る部活や進む進路に口を出したりする親は少なくないでしょう。なかには、就職先や転職先、結婚相手などに口を出す親もいるのではないでしょうか。
こうしてコントロールされ続けた子どもは学習性無力感を覚え、だんだんと自由意志・内発的動機による行動や欲求が減っていきます。
最終的に、親がいなければ何もできない依存状態になってしまうことも少なくありません。
さらに親は親で子どもに依存しており、共依存状態になってしまうケースも多いです。
無視・ネグレクトする親|自己評価と協調性が失われていく
ネグレクトとは、「子どもを遺棄すること、健康状態を損なうほどの不適切な養育、あるいは子どもの危険について重大な不注意を犯すこと」と日本小児科学会では定義されています。
ただ今回言う無視やネグレクトとは、そこまで重大なものに限定せず、身体的な健康上の影響の有無にかかわらず、親にかまってもらえず過度に放置されて育った子どものことを指します。
こうした子どもは、多動などの集中力のなさが顕著になるほか、攻撃性や衝動性が見られるようになるそうです。自己評価も低くなり、協調性がなくなるため、クラスで孤立するほか、大人になり社会に出てからも生きづらさを抱えることとなります。
暴力・暴言・虐待する親|トラウマを抱え人の感情に過敏になる
暴力・暴言などを日常的に口にする親の元で育った子どもは、心に強いトラウマを抱え、周囲の人の感情を過敏に察することで自己を守ろうとします。
本来、もっとも安心で安全なはずの家庭で気が休まらないことから、いつどこにいても心から安心することができず、人を信頼することもできなくなってしまいます。
また、否定され続けることで自尊心もなくなり、どんな成功を収めたとしても常に自己否定してしまうケースもしばしばみられます。
精神障害(精神疾患)の親|支援を受けられない苦しさにより生きづらさを抱える
研究によれば、精神障害(精神疾患)の親を持つ子どもは、精神面だけでなく生活面を含む困難を家庭内外に持っていたことがわかっています。
「わけのわからぬまま親の症状をみるしかない生活」、「親の言動に振り回される精神的不安定さ」などに加え、「世話をされない苦しい生活」があり、さらに大人になってからは、「発達への支障を自覚する生きづらさ」も明らかになったそうです。
このケースでは、ひとりひとりの親だけでなく、社会的な精神障害へ対する理解の乏しさも懸念されます。
精神障害に限らず、親の不健康が子どもの発育に何かしらの影響を及ぼすことは間違いありません。
毒親にならないために気を付けたい10のこと
毒親に該当する親に4つのタイプがあることを踏まえたうえで、次のことに気を付けて子どもと向き合っていきましょう。
物・金銭・期待・恐怖などの「外発的動機づけ」によってコントロールしようとしない
外発的動機づけとは、何かの活動に対してご褒美やペナルティが設けられていることを理由にその活動を行っている状態のことです。こうした外発的動機づけによって、子どもを自分の思うままにコントロールしようとするのは絶対にやめましょう。
「テストでいい点が取れたらご褒美にゲームを買ってあげる」などはありがちなケースですが、これはNGです。コントロールする親の多くが「子どものためを思って」過干渉になり統制したがる傾向にありますが、子どもにとってそれは幸せではありません。
「幸せとは限らない」ではなく「それは幸せではない」のです。
人間は、外発的動機づけによって選択された行動よりも、内発的動機づけによって選択した行動の方がより満足感を得ることができ、継続することができ、幸せになれるという研究結果もあります。
子どもが何かをがんばっているとき、その活動に対してご褒美をあげることもNGです。せっかく内発的動機づけによって楽しめていたことも、ご褒美が結びついた途端に楽しめなくなってしまうという結果も示されています。
子どもを褒めることも貶すこともしない。特に人前でしないように注意
さきほどの「外発的動機づけはNGである」という話の続きのような内容ですが、それだけではおそらくイメージしづらいのでさらに具体的に説明しておきます。
「テストでいい点を取ったことを褒める」「悪い点を取ったから貶(けな)す」いずれも外発的動機づけを与えることに等しく、どちらも同じようにしてはいけません。
特にしてはいけないのが、人前で褒めたり人前で貶したりすることで「優越感」や「羞恥心」を与えて行動をコントロールしようとする行為です。
こうした動機によって行動を促され続けると、その子どもは人と争うことでしか存在意義を見出せなくなってしまい、社会に出てからますます生きづらさを感じるようになってしまいます。
「○○をしなさい」と指示を出さない。くどくどと説教もしない
「ちゃんとしなさい」「早くしなさい」といった指示やお説教は、子どもが自発的に考える機会を奪います。
例えば学校に遅刻しないために朝の支度を急がせる親は、「子どもが遅刻したら困るから」やっていると思い込みがちですが、実際には「子どもが遅刻したら“自分が困る”から」急がせているのです。
子どもは、実際に遅刻して困ったことがあれば、次から自分なりに考えて遅刻しないように行動します。それでも自分でうまく計画が立てられず、親を頼ってくれたときにはじめて助言してあげればよいのです。
指示や説教をし続ける親ほど「私がいないと何もできない子なんだから」と思い込みがちですが、実際にはそれは「親が子に依存している状態」に過ぎません。子どもに依存しないよう注意しましょう。
兄弟姉妹や同級生、あるいは過去の自分と比較しない
「あなたはどうしてこうなの?」「どうしてできないの?」など、子どもの容姿・活動・振る舞いなどあらゆることに対して、他者と比較して評価することは絶対にやめましょう。
比較そのものは悪いことではなく、事実を確定するために比較はとても大切な姿勢なのですが、そもそも比較する前に「その比較の仕方や基準は正しいのか?」という課題が山積みになっていることを忘れてはいけません。
例えば「国語のテストの点数がクラスで5番目だった」ことに対して、「クラスの平均よりも高かった」と言うこともできれば「1位の子よりも低かった」と言うこともできます。
こんなに基準があいまいな比較に意味はありません。
親はむしろ、子どもが自分で何かを比較したときに、比較した対象の選定や基準が誤っていないかを見守ってあげることに専念した方がよいでしょう。
見返りや対価を求めて罪悪感を植え付けない
「せっかくがんばったのに」「せっかくお金を出したのに」「せっかく時間をかけたのに」……。
親が使う「せっかく」という言葉による子どもへの影響ははかり知れません。これらの言葉によって子どもは罪悪感を覚え、なにか新たなことをしようという意欲やチャレンジ精神を失っていきます。
そもそも「せっかく」という言葉は、他者に対して謙虚さを示すために使う社交辞令的な意味合いが強いものなので、自分のために使うのは避けたほうがよいでしょう。
感情的に怒らない。イライラを表に出さない
虐待をしてはいけないことは言うまでもないですが、分かっていてもついついしてしまいがちなのが「感情的に怒ること」です。
感情的な怒りはそこに論理性がないため、子どもにとって(子どもだけではないですが)対処ができません。そして怒りに振り回された子どもは、常にびくびくとおびえるようになります。
親が怒るのは、子どもが危険なことをしたときや命を軽々しく扱ったときなどに、「これはしてはいけないことだ」としっかり知ってもらうためです。
あなたのイライラを伝えるための手段として、感情的な怒りを用いてはいけません。
一貫性のない態度を取らない。誤りを認める謙虚さを持って
親は子どもにとって一番最初のお手本です。そのため、一貫性を持って、あなたの中の物差しがなるべくブレないようにしましょう。
ただしこれは、一度言ったことを撤回してはいけない、という意味ではありません。
いざというときには間違えたことを謝って、「あのときは自分が間違っていた」と認めることも一貫性を保つために必要な姿勢です。
親・家族の不仲を見せない
両親や家族仲が良好であるに越したことはありませんが、たとえ不仲であったとしてもそれによって子育てに悪影響を及ぼすのは避けたいところです。
ただ必要なのは「見せない」ことであり、無理にでも仲良い素振りをする必要はありません。
パートナーとの関係性はもちろん、関わるのが苦痛な肉親がいる場合には、せめて喧嘩をするのは子どもが見ていないところですることを互いに約束しましょう。
もしもそれすら守れない相手なら、縁を切ることも視野に入れたほうがよいと個人的には思います。
自分について理解することを怠らない。自分の価値観を見失わない
カウンセラーの基本姿勢のひとつに、よいカウンセラーになるためには自己一致が必要だ、というものがあります。
自己一致とは、理想の自分と現実の自分をなるべく乖離のない状態にするということ。理想を持たない、ということではなく、想像している自分が現実の自分とかけ離れてしまっていると、自分や他人に過度に厳しくなってしまったり甘くなってしまったりするものだからです。
よりよい対話をするためには自分自身を知ることがかかせません。
自信がない方は、カウンセリングを利用するというのもひとつの手です。カウンセリングというと精神疾患などの治療のために用いるものという印象があるかと思いますが、1か月に1度カウンセラーとやりとりすることで、心のメンテナンスをするという使い方もできます。
自分ができないことを押し付けない
自分について理解することの大きなメリットとして、自分ができることとできないことが分かるようになる、というものがあります。
自分ができないことが分かるようになると、子どもに自分ができないような無理難題を押し付ける可能性も少なくなるはずです。
特に、二律背反になってしまうようなしつけをしている親ほど、その内容が矛盾していることに気付いていなかったりもします。
自分ができることとできないことを弁えて、自分ができていないことを子どもに期待することのないよう注意しましょう。
まとめ
今回は、毒親の定義やタイプ分けについて、そして毒親にならないためにできる10のことについて解説しました。
本編でも触れた通り、毒親とは「継続的に毒となる悪影響を及ぼし続ける親のこと」ですから、「毒親にならないために」と検索してこういったページへたどり着いた皆様は、その時点で毒親になりにくい素質を持っていると言えるでしょう。
油断して思考停止してはいけませんが、ぜひ不安になりすぎず、今抱えている不安と慎重さこそが毒親にならないための重要な要素なのだと自信を持ってください。