交流分析・ゲーム分析|関わるほど不快な思いをする交流パターンとは

この記事では、交流分析において「ゲーム」と呼ばれる独特の交流パターンに基づく心理分析手法、ゲーム分析の基礎知識を解説します。

交流分析やゲーム分析について学習したいという方や、人間関係で悩んでいるという方は、ぜひ参考にしてください。

ゲーム分析とは

それでは早速、ゲーム分析における基本的な考え方から見ていきましょう。

「交流分析」における問題解決手法のひとつ

ゲーム分析は、交流分析という心理療法における問題解決手法のひとつで、「ゲーム」という概念をもとにトラブルの発生しやすい交流パターンを分析し、それらを解消することでよりよい対人関係構築に役立てようというものです。

交流分析とは?

交流分析は、人の悩みのほとんどは人間関係に起因するということに着目した心理療法で、対人関係を構築するうえで発生しがちな思い込みや問題行動を改善していくことを目指します。

交流分析を構成する要素は、自我状態・対話分析・ストローク・人生態度・時間の構造化・ゲーム分析・人生脚本、の7つです。

なおこれらの用語についてよく知らないという方は、こちらのコラムにて大まかに確認しておくことをおすすめします。(本稿でもそれぞれ簡単に解説はしますが、先に目を通していただいたほうが理解しやすいと思います)

ゲームは「交流すればするほど不快な思いをする交流パターン」のこと

ゲーム分析におけるゲームは、いわゆる一般的なゲームという言葉とは全く意味合いが異なります。

ゲーム分析および交流分析においてのゲームとは、すればするほど不快な思いをしたり破滅的な結末へと向かっていく交流パターンのことです。

ゲームの特筆すべき点は、望んで不快な思いをしたいわけではなく、無意識・無自覚のうちに不快な感情や破滅的な結末へと向かうコミュニケーションを取ってしまっているという点です。

ゲーム分析は「ゲームに気づき」「分析してやめる」ための手法

ゲーム分析では、すればするほど不快な思いをしてしまう「ゲーム」に該当する交流を減らしていくことで、よりよい人間関係の構築を目指します。

具体的にどのように減らしていくかというと、ゲームが始まる前にそのサインに気づくことで未然に防げるようにしたり、始まってしまったゲームをやめるためにゲームの種類と対策法を学ぶといった方法です。

その他にも、「時間の構造化」を用いて、普段ゲームをしている時間がどれほどあるかを認識し、他の時間に置き換えてゲームの時間を減らすことで問題解決に繋げていく、といったアプローチを取ることもあります。

ゲームに気づくための基礎知識

それではここからは、ゲーム分析をするうえで一番初めに必要となる「ゲームに気づくための基礎知識」を解説していきます。

まずは、何がゲームであるかに気づくため、ゲームの目的や理由を知り、さらにそれが本当にゲームなのかを見分ける方法について見ていきましょう。

ゲームをする目的・理由を知る

ゲームは基本的に無意識・無自覚のうちに行ってしまうのですが、これにはいくつかの目的があります。それぞれ順に見ていきましょう。

ゲームをする3つの目的
  1. 「自分の人生態度が正しいこと」を確認するため
  2. 「ラケット感情=偽りの感情」を味わうため
  3. 「ストローク=心の栄養」を得るため

ゲームをする目的①:「自分の人生態度が正しいこと」を確認するため

ゲームを行う1つ目の目的は、ゲームを行うことで自分の人生態度が正しいことを確認しようとしているためです。

人生態度とは、その人が幼少期から培ってきた価値観などに基づいた、他人や自分、ひいては人生に対する基本的なスタンスのこと。

人生態度には、自分に対して肯定的か否定的か、他人に対して肯定的か否定的か、という2×2の計4つの姿勢があり、このうち自他肯定以外の3つの姿勢がゲームを誘発してしまいます。

4つの人生態度
  • 自他肯定:自分にも他人にも肯定的な理想的な姿勢
  • 自己肯定・他者否定:自分が他者よりも優れているという姿勢
  • 自己否定・他者肯定:自分は他者よりも劣っているという姿勢
  • 自他否定:自分にも他人にも否定的で、すべてダメだと考える姿勢

例えば、自己否定・他者肯定(自分はダメ人間だから嫌われやすい)という姿勢を確認するために、わざと挑発的な態度を取って相手の嫌悪や怒りを誘発するゲームが行われたりします。

ゲームをする目的②:「ラケット感情=偽りの感情」を味わうため

ゲームを行う2つ目の目的は、ラケット感情を味わおうとしているからです。

ラケット感情とは、一言で表すなら偽物の感情のことで、幼い時に親の愛情を得る手段として形成された感情の条件反射のことを指します。

ラケット感情の例
  1. 親に相手をしてもらえず寂しがっている子どもがいる
  2. 構ってもらうために泣いたり叫んだりして注目を集めようとする
  3. 迷惑をかけたことでこっぴどく叱られてしまう(=恐れを感じる)
  4. 叱られてしまったものの「構ってもらう」という目的は達成される(=喜びを感じる)
  5. 本来の「叱られる=怖い」という感情がすりかわり、「叱られる=喜び」と解釈するようになる
  6. すると「叱られることによる喜び」というラケット感情を得るために、相手を怒らせるゲームをするようになる

ゲームをする目的③:「ストローク=心の栄養」を得るため

ゲームを行う3つ目の目的は、ストロークという心の栄養を得るためです。

ストロークとは、相手を認めたことを示す言動すべてのことで、コミュニケーションにおける基本単位であり、また人間にとって不可欠なものでもあります。

ただし、このストロークにはプラスのものもあればマイナスのものもあり、ゲームによって得られるのはマイナスのストロークです。

ストロークの例
  • プラスのストローク:褒める・見守る・なでる、など
  • マイナスのストローク:けなす・見下す・殴る、など

人間はストロークなしでは生きていけないため、たとえそれがマイナスのストロークであっても欲してしまうのです。

「ゲームの公式」によりそれが本当にゲームかを確かめる

ゲームかも知れない、という交流にいざ気づいても、それが本当にゲームかどうかを当事者が見極めるのは非常に困難です。

そこでぜひ知っておきたいのが、交流分析の提唱者であるエリック・バーンが規定した「ゲームの公式(ゲーム方程式)」です。

不快な思いをしたり破滅的な結末に陥ったものすべてがゲームなわけではなく、次の公式に当てはまるものだけがゲームであることに注意しましょう。

特に見分けやすいポイントは、役割の交代と混乱があるかどうか、という点です。

ゲームの公式(ゲーム方程式)

①仕掛け人(Con:餌)+弱みを持つ相手(Gimmick:罠)
||
②反応(Response)

役割の交代(Switch)

混乱(Cross up)

⑤結末(Pay-off)

ゲームの公式を構成する要素と大まかな流れ

方程式を構成する要素と流れは、大まかに次の通りです。

ゲームの大まかな流れ
  1. 仕掛け人が隠れた動機(=餌)を持ってゲームの相手を探し始め、ちょうどよい弱みを持った相手を見つけたところで、感情に訴えかけるようなアクション(=罠)を仕掛ける
  2. 相手が罠に対して反応した段階でゲームがスタートする
  3. ゲームが進行してしばらくすると、仕掛け人と相手の間に交叉的交流が生まれ、互いの役割が交代する
  4. 役割の交代によって両者の関係性や感情が混乱する
  5. 混乱の末に、ゲームは思いもよらなかった(表面的な目的とは異なるが、隠れた動機を満たす)結末を迎える

結末を迎えた段階で仕掛け人の動機もはっきりするため、客観的にはそれがゲームであったことが明らかになります。しかし当事者はそれがなぜそのような結末を迎えたのか、仕掛け人すら気づくことができません

ゲームの公式により「自他肯定」や「冷静」な状態ではゲームが起こらないことが分かる

ゲームの公式を見ると、ゲームが始まるためには仕掛け人の罠に、相手が反応することが必須であると分かります。

そしてこの罠は多くの場合、イライラさせるものであったり恐怖を感じさせるものであったりするのですが、自他肯定の人生態度を示す場合や、あるいは理性的な自我状態が優位なときには、そもそもこれに対して反応することがありません

そのため、人生態度を自他肯定の状態へ近づける努力をするほか、冷静で理性的な判断ができるよう普段から心がけることによっても、ゲームを避けることができます。

ゲームを未然に防ぐ方法としては、冷静で理性的な判断をするというのがもっとも近道であり効果的です。

まとめ

今回は、ゲーム分析におけるゲームという概念について、まずは気づくために必要な要素について解説しました。

あなたや、あなたの身の回りにあるコミュニケーションがゲームになってしまっていないか、確かめる参考になれば幸いです。

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