根本的な帰属の誤りとは?具体例と3つの対策をわかりやすく解説

「お金を払わないのは”その人”がケチだから」「時間に遅れるのは”その人”がだらしないからだ」といったように、何かの原因を人に求めようとしてしまう根本的な帰属の誤り

社会心理学などにおける観察者効果の一種である認知バイアスの中でも、ポピュラーなもののひとつである根本的な帰属の誤りについて、今回は具体例とあわせて対策方法を解説していきます。

この記事の想定読者
  • 遅刻する人に対して「だらしない人」と思う
  • 電車で電話している人に対して「マナーが悪い人」と思う
  • 失礼なことを言う人に対して「デリカシーのない人」と思う

上記に心当たりのある方は、ぜひチェックしてみてください。

根本的な帰属の誤りとは

根本的な帰属の誤りは、認知バイアスのひとつです。まずは、認知バイアスとは何なのか、というところから確認しておきましょう。

認知バイアスとは

認知バイアスとは、私たちが先入観・偏見・思い込みなどによって事実を誤って認識しやすい傾向のことを言います。

認知心理学や社会心理学といった学問における概念で、思い込みが激しい人のことを「バイアスが強い」などと表現することもあります。

帰属の誤りとは

そんな認知バイアスの中でも、名前の通り「帰属」を誤ってしまうもののことを根本的な帰属の誤りと言います。

では帰属とは何かというと、社会心理学における構成概念のひとつで、 「出来事や他人の行動や自分の行動の原因を説明する心的過程のこと」です。

つまり、誰かや、何かのせいにすることそのもののことを帰属と言います。これそのものは悪いことではありません。結果には原因があるものなので、原因そのものを捉えようとすること自体は何らおかしくありません。

ただ、このときに「誰か」や「何か」を間違えて認識してしまうことがあります。これを根本的な帰属の誤りと言います。

根本的な帰属の誤りは「人の性質に原因を求める」バイアス

ただ、根本的な帰属の誤りは単に帰属を誤ることを指すのではなく、「外的帰属を内的帰属と誤って認識しやすい」という性質のものなんです。

外的帰属というのは、「何か」=つまり状況的要因のこと。そして内的帰属とは、「誰か」=つまり人的要因のことを指します。

そして私たち人間は、何かが起こったときに「状況のせいだ」と考えるよりも、「あの人のせいだ」と考える傾向が強いんです。

根本的な帰属の誤りの例
  • 遅刻する人はだらしない ⇒ 電車の遅延かもしれない
  • 電車で電話する人はマナーが悪い ⇒ 緊急の事情かもしれない
  • 失礼なことを言う人はデリカシーがない ⇒ 話の前提が伝わっていないのかもしれない

このように、本来は外的帰属=状況的要因の影響が大きいかもしれないシーンでも、人の性格や性質に原因を求める(帰属する)のが「根本的な帰属の誤り」です。

なお同様の意味で、対応バイアスという言葉が用いられる場合もありますが、こちらも用法や意味は基本的に同じです。

根本的な帰属の誤りの具体例

根本的な帰属の誤りについて、関連して発生するそのほかのバイアスなども絡めつつ、具体例をさらに掘り下げていきたいと思います。

外国人の爆買いを見て「マナーの悪い国民性だなぁ」と思う

これは実際には国民性ではなく、所得水準による違いが主な原因であり、「これまで国内の目にしか触れてこなかった人々が国外にでたときに起こるギャップ」だと考えられています。

国際社会へデビューして間もないため、単に国内のマナーと国外のマナーの統一が取れていないだけなのです。これは日本も例外ではありません。その証拠に、かつて高度経済成長期などに日本人が海外旅行をし始めたころも、同様の指摘をなされていました。それが数十年を経て、マナーが「よくなった」のです。

なおこのケースについては、日本人と外国人という2つの集団を比較したことによって起こる「内集団バイアス」「外集団バイアス」も関係していると考えられるでしょう。

遅刻の多い人を見て「だらしない人だなぁ」と思う

前述した通り、遅刻の理由はさまざまです。そこで「電車の遅延のせいかもしれない」という意見に対して、「じゃあ早く家を出ればいい。それができないということはやはりだらしないからだ」と考える人もいると思います。

しかし、その人がいつ家を出ているのか、そして道中どのような事態が発生したのかを正確に把握していない限りは、帰属が誤っている可能性を否定できません。また、確実に遅刻しない時間に家を出るということがどれほど困難であるかは、人によってまちまちです。

実際にはなにかしらの病気であり、意思ではなく薬でどうにかなるかもしれない。今週はたまたま電車の遅延が多かっただけかもしれないし、はたまた家族の世話があったのかもしれない、など、原因はいくらでも考えられますね。

説教をする人に対して「口うるさい人だなぁ」と思う

これは、自分が説教をされる場合よりも、第三者であることを想定したほうがわかりやすいかもしれません。

誰かが誰かに説教しているシーンを見た時に、「厳しい人だなぁ」とか「口うるさいことを言う人だなぁ」と思ってしまうのも、根本的な帰属の誤りが関連していると思われます。

またこのとき反対に、「怒られるほうにも原因があるのでは」と思う傾向は、「公正世界仮説」といいます。どちらにせよ偏り過ぎには注意が必要です。

>>公正世界仮設とは|原因と対処法を解説

根本的な帰属の誤りを対策する3つの方法

続いて、これら根本的な帰属の誤りはどうすれば軽減することができるのか、対策法を解説します。

次の3つの軸で考えることが大切です。

根本的な帰属の誤りを対策する3つの軸

①他の人だったらどうか?
②自分だったらどうか?
③過去や未来はどうか?

①「他に同じことをする人はいないか」を考えてみる

まずは、「あの人は遅刻してだらしないなぁ」と思ったときに、他の人はどうだろう、と考えてみましょう。例えば、同じ日に別の人も遅刻していたならば、「ああ、電車が遅れたのかもしれないな」と思えます

また連日遅刻をしているようなら、他に同じように遅刻をしている人がいないか観察してみるのです。想像しただけではいまいちピンと来ない場合は、直接聞いて見てもいいでしょう。人によって事情はさまざまであることに気が付けるはずです。

②「どんな事情があれば自分もそうするか」を考えてみる

今度は、自分だったらどうか、を考えてみましょう。自分が遅刻したときに「まったく自分はだらしがないなぁ」と考える人は少ないのではないでしょうか。

電車が遅延したから、車両が混みあっていて1本見送ったから、途中で具合が悪くなって休憩していたから、などなどいろんな事情を考えることができると思います。

そういった事情が、その人にも起こっていたかもしれない、と考えることができれば、根本的な帰属の誤りはかなり低減することができるでしょう。

一方、「まったく自分はだらしがないなぁ」と考えてしまう人は、過度な自己否定が癖づいてしまっている可能性があります。それが成長に繋がるものであればよいのですが、自己嫌悪が強すぎて辛いとお悩みの場合はこちらもチェックしてみてください。

>>自己嫌悪に陥る2つの原因とは

③「過去や未来はどうなるか」を考えてみる

例えば、あなた自身は一度も遅刻したことがないでしょうか?そして、遅刻したときには何か対策を講じなかったでしょうか。

もしも経験がある事柄であれば、その対策をぜひ教えてあげてみてください。それを実践した人も「遅刻しない人」になることができるかもしれません。

このように、「以前はどうだったか」「今後どうなるか」を考えてみると、さらに視野を広げて柔軟な選択をすることができるようになります。

根本的な帰属の誤りと正反対の「自己奉仕バイアス」

根本的な帰属の誤りについて知るうえで、ぜひセットで押さえておきたい認知バイアスが「自己奉仕バイアス」です。

これは、「自分の成功は内的帰属(性格や気質に原因を求める)するのに対し、自分の失敗について考えるときは外的帰属(状況に原因を求める)する傾向」のことを指します。

つまり、

うまく行ったのはわたしが頑張ったから。うまく行かなかったのは運が悪かったから。

と考える傾向のことです。これもよくある考え方ですよね。

どちらのパターンも知っておくことで、より認知バイアスに振り回されない考え方ができるように気を付けましょう。

まとめ

以上、根本的な帰属の誤りの具体例と対策方法について解説しました。

認知バイアスは、「そんな悪い傾向があるなんて……」と人間性を卑下するためのものではなく、「そういう性質があるから気を付けよう」と、知ることでよりよい選択をするための概念です。

認知の歪みについて理解を深めることで、あなたの今がより生きやすくなることを願っています。

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