- 人混みや大きな音、強い光などの刺激が苦手
- 話し声に敏感で、人といると息苦しい
- 感情移入しやすく、すぐに泣いてしまう
- 些細な一言で傷つき、いつまでも忘れられない
- 人が怒られていると、自分のことのように感じて辛い
今回は、こんな悩みを抱えるHSPの人と付き合うパートナーのために、実際にHSPである妻と暮らす私が、普段心がけているHSPのパートナーとの接し方のコツを解説します。
妻にも協力してもらいながら、「HSPの気質が親や夫に理解されない」とお悩みの方が、ご家族やパートナーにご自身のトリセツ(取扱説明書)のようなものとして共有できる内容を目指しました。
ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
HSPとは「とても敏感な人」
まずはじめに、「HSPってそもそも何?」という方もいらっしゃると思いますのでご説明しておきます。
HSPはHighly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略で、「とても敏感な人」のことを指します。
音、光、匂いなどの五感に訴えるような刺激に敏感で、人の行動や心情も敏感に察知するため、気が利く人が多い一方で、非常に傷つきやすくさまざまな生きづらさを抱えています。
なお、ネット上では「HSP診断テスト」などのコンテンツもたくさんありますが、HSPはあくまでも性質の話であり、病院などで診断される病気・障害といった類のものではありません。
より詳細に確認したい方は、HSPについて解説したこちらのコラムもご一読ください。
HSPの妻の特徴
今回は私の妻の特徴をもとに解説しますので、あなた自身やあなたのパートナーが近い性質を持っているかどうか、ぜひチェックしてみてください。
人混みや注射が極端に苦手
妻はとにかく人混みが苦手です。
どこかへ出かけるときも、少し遠くまで歩く程度なら体力的に問題ないのですが、人混みの場合は、ほんの数分歩いただけで精神的に疲れてしまいます。
また同じくらい苦手なのが、痛みです。
痛みそのものに加えて、痛そうなシチュエーションも苦手なよう。自分が注射を打たれるのはもちろん苦手ですし、ドラマやアニメで血が流れるようなシーンもあまり得意ではありません。
気を使いたくて使っているわけではない
HSPのパートナーがいる方は、話を聞いていて「ただの自意識過剰ではないか」「被害妄想ではないか」などと感じることもあるかもしれません。
しかし、HSPの人も気を使いたくて使っているわけではないのです。
私もこの感覚がなかなか理解できず、何度も妻を傷つけてしまいました。「気にしすぎだよ」は禁句です。
「嫌われないように」張り切ってしまう
繊細で敏感で、苦手なものがはっきりしているからこそ、好きになった人や物へ向ける愛情も情熱的になります。
そのため恋愛においては恋愛依存症のような状態になりやすく、さらに相手の気持ちの機微を察して「嫌われないように」と頑張りすぎてしまう傾向もあります。
今でこそ安定したのですが、妻も当初は依存傾向が強かったです。
それ自体が悪いものというわけではありませんが、パートナーが自覚していないと、無意識のうちに行動をコントロールしてしまう可能性もありますので、注意してください。
話を聞くことで追い詰めてしまうことも
悩みを抱えているときは話せば楽になる、とよく言いますが、妻の場合は、話したからといって楽になるわけではありませんでした。
こちらのかける言葉・態度・声色などによっては、話すことでかえって追い詰めてしまうこともありますし、話しているうちにどんどん悪い方向へ進んでしまったこともあります。
HSPの妻と付き合う上で心がけている接し方のコツ
ここからは、私が妻と付き合う上で実際に心がけている対策について解説します。
計画を立てるときは余裕をもって。誰と会うかも要注意
計画を立てるときはまず、余裕をもつことが重要です。
そして肝心なのが、体力の消耗は物理的な影響より心理的な影響のが強いということ。
妻の場合は、移動距離の長さよりも、人混みで過ごす時間よりも、実は人間関係で一番消耗します。
つまり、「会いたくない人に会うときはめちゃくちゃ疲れる」ということ。
「誰でもそういう傾向があるのでは?」と思われるかもしれませんが、その度合いが妻はとても顕著でした。
それに加えて、自分の体力を片道分で考えがち(辿り着けるけど帰ってこれない計算をしがち)なので、本当に大丈夫かどうかを私も一緒に考えるようにしています。
普段から刺激になるものを把握しておく
どんな要因が体力の消耗に繋がるかを知るためには、普段の話や行動などから、どんな刺激を特に苦手としているかを把握することも大切です。
妻は、「人の話し声」「グロテスクなシーン」「お香などの強い香り」が苦手なので、それらの対策に特に注意を払っています。
話し声は耳栓で対策したり、グロテスクなシーンは映画やアニメを見る前に内容を下調べしたり、洗剤やボディソープを買うときは香りを店頭でチェックしたり、などなど。
また感情を刺激するものにも注意が必要です。
映画やアニメを見るうえで、一見平和そうなストーリーでも精神的に意外とヘビーだった、というのはよくある話なので、新しい作品に手を出すときは必ず先にレビューに目を通すようにしています。
普段から話を聞く習慣を作っておく
あまりパートナーと話す習慣がない場合は、できるだけ普段から話を聞く習慣を作っておくことをおすすめします。
HSPの人は、日常生活で受け取る情報量が多く溜め込みやすいので、ちょっと油断するとパンクしかねません。
かといって、「今日こそは聞くぞ」とか、「大事な話だからちゃんと聞こう」と身構えてまとめて聞こうとすると、結果的に自分も相手も追い込んでしまいます。
そのため、「今日は何があったの?」と普段から話を聞く習慣を作るのが一番です。実際、私はそれで何度もパンクしてしまいました……。
どうやって話し合いをすればいいかわからないという方は、こちらの「話し合う習慣を作る時に押さえておきたいポイント」について解説したコラムをご覧ください。
話は「自分に余裕のある範囲で聞く」ことを心がける
前項とも重複しますが、話は「自分が余裕のある範囲で聞く」ことが肝心です。
あなた自身にもHSPの性質があるならなおさら、すべてを聞こうとしないでください。
パンクしないため、というキャパシティの問題もありますが、それに加えて「聞きすぎるとかえってよくない」ということでもあります。
私も、妻と話し続けてようやく学んだのですが、悩みって聞かれれば聞かれただけ出てきてしまうんです。
言葉にするほどでもなかったささいな出来事が、いざ面と向かって話すと大事に聞こえてしまったりもします。
どちらの理由からも、話の聞きすぎはあまりいい結果を生まないと実感しました。
そのため私たちは普段から、「今日は大丈夫」「こういう話はちょっと聞けない」とお互いにコントロールするようにしています。
動揺しているときは無理に尋ねない
これは、話し合いをするときに気を付けているポイントです。
相手が明らかに動揺しているときは、無理に聞かないように注意しています。その質問が、相手にとって追い打ちになってしまう可能性があるからです。
妻が動揺しているときは、質問する前にまず自分の言葉を振り返って、どれが動揺させる可能性が高かったかを考えます。そうしてから、「ああ、ここで誤解させたかもしれない」に辿り着いてから話すようにしています。
考えてもわからないときは、時間を置くしかありません。待っている間に妻が話してくれることもありますし、こちらがひょんなことをきっかけに気づく可能性もあります。
とにかく無理やり尋ねてもいいことはないので、せめて私だけでもあまり深刻になりすぎないように気を付けています。
諦めも肝心。わからないものを察しようとしない
わからなければ諦める。これがもっとも重視しているポイントです。
これはHSPかどうかに関係なく、人とコミュニケーションする上で普段から気を付けていることですが、相手の気持ちを察するなどどうせ無理だと諦めを持つようにしています。
「いつもと違うな」と思ったときも、「なんで悲しそうなの?」「何が辛いの?」となどといった聞き方はせずに、聞くとしても「なんかあったの?」くらいの適当さになるよう気を付ける。
「悲しそうだね」「辛そうだね」といった尋ね方は、「あなたは悲しんでいる」と断定しているようで、あまり良くないと考えます。
「悲しそうだね」と言われれば、人によってはその言葉をきっかけに「そうか私は悲しんでいるのか」と余計に沈んでしまいますし、妻の場合は心配をかけてしまったことに対してさらに落ち込んでしまうので、いっそ気づかないふりをするくらいがちょうどいいときもあるのです。
もちろんその代わり、話してくれたときには全力で耳を傾けます。
HSPのパートナーと付き合う上での注意点
ここまで私自身の実体験をもとに解説してきましたが、なかには「パートナー自身がHSPかどうかはっきりわからない」という方もいるでしょう。
そういった方のために、いくつか注意点を解説しておきます。
パートナーの立場からHSPについて説明しようとしなくていい
私の場合は、妻が自分からHSPという概念に気づいたのでこの点についてはあまり悩まなかったのですが、これがもしこちらから「あなたの敏感さはHSPという体質かもしれない」と伝えてしまっていたら、本人はどう受け取っていたかわかりません。
あなた自身もその傾向があるならばまだパートナーにとっても共感しやすいかもしれませんが、まったく分からない状態だったら、無理に説明しないよう気を付けてください。
きっとパートナーであるあなたがHSPを疑うほどですから、その方自身も自分の敏感さには何かしら自覚があるはずです。
それに対して何か言われるのは、たとえ良かれと思っての言葉だったとしても、気持ちのいいものではありません。詳細はこちらのコラムで解説していますが、そもそもHSPとは概念であり病気や障害といった類のものではありません。
これまでうまく付き合ってこれたのなら、HSPという単語に執着せずともきっと大丈夫です。
敏感に察してくれるからといって言葉にする努力を惜しまないこと
HSPの人は、1を伝えれば10を聞き取ってくれる傾向があります。
それはすばらしい能力ですが、しかしそれに頼ってばかりではいけません。
きちんと伝えたいことは、言葉にして伝える努力を惜しまないようにしましょう。
そんなに大げさなことではなく、普段の連絡でもなるべく一言添えるよう心掛けたり、あるいは何かの節目には直筆の手紙を書いて送ったりすることをおすすめします。
あなたの感情を反映していることを忘れないこと
パートナーが何かいらだっていたり、おびえていたり、不安がっているときは、もっとも身近にいるあなた自身の感情を反映している可能性が高いことを忘れないでください。
パートナーがいらだっているように見えるなら、本当にいらだっているのはあなたかもしれません。おびえているときも、不安がっているときも同じです。
まとめ
以上が、HSPの妻の特徴と、HSPの妻と付き合う上で心がけている対策でした。
今回ご紹介した内容は、HSPの方とのやりとりに限らず、意識するだけでコミュニケーションが円滑になるものばかりです。
パートナーと歩み寄るためだけでなく、日ごろの人間関係にお悩みの方にとっても参考になれば幸いです。
おわりに:妻の状態について
最後に、私の妻についてお断りしておきます。
私の妻は、自他ともに認めるHSP傾向があるほか、ADHDやアダルトチルドレン的傾向も併せ持っており、元うつ病で認知行動療法やカウンセリングなどを受けていた経験があります。
今回の記事では、HSPの特徴や傾向のみに焦点を当てて解説しましたが、それらは彼女を形づくるひとつの要素でしかなく、どれかに対する理解を深めるだけでは、彼女を理解することはできないでしょう。
そしてこれは、誰にでも言えることだと思います。
何が言いたいかというと、「ひとつの側面で判断しないよう気を付けてください」ということです。今回の内容に心当たりのある方は、同じく他の要素も併せ持っている可能性があります。
家族やパートナーがを支えるためには、あなた自身のがんばりすぎも禁物です。